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日記一覧

「川端康成異相短篇集」
2022年08月12日20:38

読書日記「川端康成異相短篇集」川端康成 作(中公文庫)しばしば幻想的な風味を持つ川端康成の作品から「異相」の切り口をもって選び抜いた短編集。いわゆる幻想文学や怪奇小説というとそれなりの構造があって、例えば日常の中にふとした不思議が紛れ込むと

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「宮廷の道化師たち」
2022年07月30日20:44

読書日記「宮廷の道化師たち」アヴィグドル・ダガン 作(集英社)2001年刊ホロコーストの最中、ナチ司令官専属の道化師として生き延びた4人のユダヤ人。戦後イェルサレムでの邂逅までの変転と復讐のドラマ。語り手は4人の道化師の一人、背中にコブのある元判

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「絶対製造工場」
2022年07月24日20:48

読書日記「絶対製造工場」カレル・チャペック 作(平凡社ライブラリー)物質の持つ質量を全てエネルギーに変える画期的な装置が発明される。だが物質の解放と同時にあらゆる物に遍在する絶対的存在(神)も解き放たれてしまう。異色奇想小説。絶対が世界に氾

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「病牀六尺」
2022年07月20日21:03

読書日記「病牀六尺」正岡子規 著(岩波文庫)子規が亡くなる直前まで連載した病床エッセイ集。俳句評から絵画論を中心に、室内から見た日々移ろいゆく世界の印象。エッセイというものは不思議なもので、日常普通のことを気負うことなく自然に書いて面白いの

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「注文の多い註文書」
2022年07月11日20:27

読書日記「注文の多い註文書」小川洋子 クラフト・エヴィング商會 (ちくま文庫)文学作品の中に登場するこの世にないはずのものを探し出す。註文書・納品書・受領書の3編で構成される5つの物語。小川洋子が仕立て上げた不思議な註文書のエピソード。みな面

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読書日記「ミハイル・ブルガーコフ作品集」(文化科学高等研究院出版局)ウクライナ危機にあたり、緊急応援出版として企画されたウクライナの大作家ブルガーコフの作品集。2010年に発行されたものに図版(写真)を追加して再発行。本書の売り上げはウクライナ

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「亡命者」
2022年06月21日20:37

読書日記「亡命者」高橋たか子 作(講談社文芸文庫)渡仏して安アパートを拠点に、各地の修道院を宿泊して歩く作者の体験記。そして体験をもとに生み出された小説も併録。キリスト教における亡命とは何か。わからない。作者のたどり着こうとする「プスチニア

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「アルケミスト」
2022年06月13日20:30

読書日記「アルケミスト」パウロ・コエーリョ 作(KADOKAWA)南スペインアンダルシアで暮らす羊飼いの少年。夢のお告げと不思議な老人の導きによってアフリカへ。ピラミッドに隠された宝物を探す旅で彼が見つけたものとは?たしかに小説の形はとっているが、

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読書日記「いやいやながら医者にされ」モリエール 作(岩波文庫)夫婦喧嘩のはらいせに、女房によって医者であるとの噂を流されたきこりの夫。そして巻き起こる騒動。傑作喜劇。かなりドタバタと謂わゆるコント芝居が続いて、正真正銘の笑うための喜劇だなあ

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「虫喰仙次」
2022年06月10日20:21

読書日記「虫喰仙次」色川武大(小学館P+D BOOKS)親代わりとして兄弟たちの成長を見守ったため晩婚であった著者の父。幼き頃の著者と父親の思い出を中心に縁者の人々を描く短編集。この短編連作の舞台である著者の実家は東京牛込であり、時代は1930年代であ

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「夜鳥(よどり)」
2022年06月08日20:22

読書日記「夜鳥(よどり)」モーリス・ルヴェル 作(創元推理文庫)怪奇・残酷のみならず、心に響く悲話までも。わかりやすく読みやすい。「新青年」誌で人気を博した稀代の短編作家。ポーの衣鉢を継ぐ、あるいはそれをも凌ぐ怪奇幻想作家という評価を聞いて

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「薬指の標本」
2022年05月30日20:51

読書日記「薬指の標本」小川洋子 作(新潮文庫)思い出の品以外にも音楽や頬の傷まで、あらゆるものを試験管内に沈める謎の標本家。独り言を言うための小部屋を持ち運んで旅をする母と息子。幻想譚2編「薬指の標本」:基本的な設定は充分ミステリーでありな

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読書日記「時間はなぜあるのか?」平田聡/島田珠巳 著(ミネルヴァ書房)霊長類学と言語学の知見を集めて時間認識の謎に迫る。野心的で楽しい共同研究。時間の研究となると哲学や物理学の立場から描く、時間全体の大きな話になりがちだけど、言語学やチンパ

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「チル」
2022年05月23日21:09

読書日記「チル」松井雪子 作(講談社文庫 2008年)山里で暮らす少女チルのまわりには彼女以外には見えない不思議な存在がいっぱい。珠玉のファンタジー4編。天は二物を与える。自分にとっては「マヨネーズ姫」でおなじみの漫画家松井雪子さんは、れっきとし

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読書日記「掃除婦のための手引き書」ルシア・ベルリン 作(講談社文庫)波乱万丈の人生から生まれた魂を揺さぶる言葉の魔術。熱く美しい世界に押し流されて息つく暇もない短編集。作者の人生をベースにした短編だとわかってはいるものの、これだけ次から次へ

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「誘惑者」
2022年05月14日20:21

読書日記「誘惑者」高橋たか子 作(小学館 P+D BOOKS)昭和25年。生きることに厭いた女学生・鳥居哲代は自殺志願者の友人を幇助する目的で三原山火口へと向かう。友人の自死をしだいに避けられないところまで導く誘惑者としての彼女の生き方は?二人の女学生

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読書日記「待望の短編は忘却の彼方に」中原昌也 作(河出文庫)混沌とイレギュラー、はみ出しと番外を感じさせる破格の短編集。この作家は自分の知らないうちにどうも奇妙な短編を書いているのでは?と思って読んでみると果たしてそうだった。ふざけているの

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「臨海楼綺譚」
2022年05月02日20:19

読書日記「臨海楼綺譚」スティーヴンスン 作(光文社古典新訳文庫)稀代のストーリーテラー、スティーヴンスンの面白短編4編。「臨海楼綺譚」:王道をいく冒険譚。海岸近くの望楼で炭焼党員を迎え撃つ。タッグを組む旧友の性格が勇敢だが正義漢でもなく、い

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「不思議な少年」
2022年04月29日20:43

読書日記「不思議な少年」マーク・トウェイン 作(岩波文庫)平凡な3少年の友人として突然現れた天使サタン。天界の住人として万能の力を持つ彼は、人間の救い難い愚かさ・残酷さを容赦なく明らかにしてみせる。なんとなく遠ざけていた著者代表作だが、まさ

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「蛇口」
2022年04月26日20:11

読書日記「蛇口」シルビナ・オカンポ 作東宣出版現代アルゼンチン短編小説。短いことを存分に活かした幻想文学集。ごく短い小品ばかりで手軽に読めるが、充分な幻想性があって楽しい。前半、とらえどころのない、ややわかりにくい作品もあるが、本も半ばにさ

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読書日記「ウィステリアと三人の女たち」川上未映子 作(新潮文庫)平凡な日常の中にもちょっとした異変が潜んでいて、ある日ふと顔を出す。短編4作。文章が美しいだけでなく心躍るリズムがあって、読むことが楽しい。選ばれる言葉は上品だけど大胆。つねに

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「樹影譚」
2022年04月19日20:38

読書日記「樹影譚」丸谷才一 作(文春文庫)手を替え品を替え書かれた短編3作。風味馥郁たる名品を味わう楽しさ。「樹影譚」:樹自体ではなく壁に映った樹の影の美しさにひかれるのは何故か?その感覚の由来をめぐる。作者はそれを短編小説に仕立て上げよう

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「遮光」
2022年04月16日20:07

読書日記「遮光」中村文則 作(新潮文庫)恋人の死を周囲に隠しながら生きる、言動のすべてが他者の目を意識した虚言で占められる青年。病的な日常を描いた恐ろしい小説。幼き頃に両親を亡くし、以後周囲の人間に嫌われないよう他人の顔色ばかり見て生きてき

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「海」
2022年04月14日20:39

読書日記「海」小川洋子 作(新潮文庫)どこか幻想的で奇妙な風味溢れる短編集。日常からの離れ方がさりげなくて、意図的にこしらえた設定であってもわざとらしくなく、独特の香りを楽しみながら読める。「バタフライ和文タイプ事務所」:医学部の院生が書い

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読書日記「ホモ・エコノミクス」ー利己的人間の思想史重田園枝 著(ちくま新書)科学たるべく経済学が中心に据えた概念ホモ・エコノミクス。新自由主義に侵された昨今、ホモ・エコノミクスが経済学を超えて我々の日常を侵食するまでを広範な社会思想史から分

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読書日記「世界は『関係』でできている」ー美しくも過激な量子論カルロ・ロヴェッリ 著(NHK出版)量子の奇妙なふるまいの正体を新たな解釈「関係」をもって突破する。話題書「時間は存在しない」につづく目から鱗の問題作。前作「時間は存在しない」を興奮

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「悲しみの歌」
2022年04月01日20:54

読書日記「悲しみの歌」遠藤周作 作(新潮文庫)過去に米兵捕虜の生体解剖に参加した医師。正義派ジャーナリスト。隣人愛にあふれた外人。裏表ある大学教授。新宿を舞台にさまざまな人間が絡み合う現代劇。代表作「海と毒薬」の後日編。表舞台ではもっとも先

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「JR上野駅公園口」
2022年03月28日20:33

読書日記「JR上野駅公園口」柳美里 作(河出文庫)高度成長期を出稼ぎ労働者として懸命に駆け抜けた男。やがて故郷相馬を捨て上野公園口でホームレスとして人生の最期を迎えようとする。巻末にも挙げられているとおり、多くの資料と丹念な取材によって、かつ

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「運命」
2022年03月12日20:12

読書日記「運命」国木田独歩 作(岩波文庫)早逝した独歩が最後に出した第3短編集。自然主義にとどまることなく、豊かなストーリー性をもって人生の本質に迫る。「武蔵野」その他の印象から、なんとなく私小説的な作品を予想していたが、表題作ほか遠慮なく

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読書日記「世界の果てまで連れてって!…」ブレーズ・サンドラール 作(ちくま文庫)第二次大戦後のパリで自由気ままで破天荒な生活を続ける老女優。そのあきれた乱脈ぶりを本人が喋って喋ってしゃべり尽くす物語。物語の最終近くで、まぶたに刺青をされた外

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