中学時代に、社会化の副教材で世界地図帳を見て、グリーンランドという島はずいぶん大きいなと思った記憶がある。何しろアフリカ大陸とほとんど同じ大きさだったからだ。
また当時アメリカと並ぶ超大国だったソ連の広さに圧倒された。「メルカトル図法」による世界地図だったからだ。
しかし、すべては錯覚だった。そのことに気づくのに、ある程度世界観が身につく高校生になるまで待たなければならなかった。
◎実際には14倍も大きいアフリカ大陸が極北域のグリーンランドと同じ大きさに表現
国連は、4日の総会で、国や地域の大きさをより正確に示す地図の普及を促す決議案を採択した(写真)。
決議を主導したのはアフリカ諸国で、日本を含む西欧諸国、アジア、アフリカの大半が賛成した。高緯度のエリアほど面積が大きく表現される「メルカトル図法」は赤道付近が相対的に小さく見えるのだ(図=上がメルカトル図法による世界地図、下は後述のイコールアース技法)。反対したのは1国中心主義のトランプのアメリカだけだった。
理由は、「不均衡な世界観」の改善を訴える。例えば冒頭のように、メルカトル図法ではほとんど同程度の大きさに描かれるグリーンランドとアフリカ大陸だが、実際にはアフリカ大陸はグリーンランドの約14倍も大きい。
ゆがみは、まだある。極北に広大な領土を抱える旧ソ連は、南北と東西に引き伸ばされるので、実際よりかなりの超大国に見える。だから冷戦期には、ソ連は共産主義の強大さを誇示するプロパガンダとしてこの地図を利用した。
◎大航海時代に角度を正確につかむために必須だった
メルカトル図法は、16世紀のネーデルラントの地理学者ゲラルドゥス・メルカトル(図)が制作した。時は大航海時代だ。球体の地峡表面を平面に描くため、どうしてもゆがみが出来るが、この図法では経線と緯線が直角に交わっていて、地図上の角度が実際の地球上の角度と一致するから、2地点間を結ぶ緯度上の角度がどの程度あるかを把握するために航海には必要だった。昔から航海用・海図として重宝されてきたのだ。
しかし小さすぎるように描かれたアフリカ大陸の国々にとって、不当に過小に描かれていると不評が高まった。これは、国家の尊厳にも関わる。
◎イコールアース技法の移行へ
そこで、低緯度地域の面積表現がほぼ正確な「イコールアース技法」の採用の声がアフリカ諸国で高まった。アフリカ連合(AU)はこの2月の首脳会議でイコールアース技法の普及を働きかける方針を確認した。
先の国連総会の決議は、その一環だ。今はどうか知らないが、僕が小学校の頃、教室に維持される世界地図はメルカトル図法だった。「日本はこんなに小さいから、努力しないと世界に負ける」と教師から言われた記憶がある。まだ残っているとしても、学校地図からメルカトル図法は追放されるだろう。
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