悪臭を放ち、また植物の体液を吸って生きるのでイネなどの多くの農作物の害虫として嫌われるカメムシだが(写真=カキやミカンを吸汁するツヤアオカメムシ)、産総研などの研究グループが「トロイの木馬」のようなカメムシに対する病原微生物を発見した。将来、カメムシ駆除の生物農薬として期待される。
◎カメムシ殺す病原微生物を発見
カメムシ類は農作物の体液を吸汁して害を引き起こす。防除の難しい難防除害虫として知られていて、化学農薬を使用する以外には有効な防除手段がなかった。
研究グループは、カメムシ類に病原性を示す微生物の探索を行い、共生微生物と同じ感染経路・行動を示す昆虫病原微生物を発見した。
発見された病原微生物は、土壌からカメムシの消化管に取り込まれ、共生微生物と同じ「ドリル泳法」によって共生器官に侵入、異常増殖して宿主カメムシを10日以内にほぼ100%死に至らしめることが明らかになった(写真と図)。
カメムシへの特異性が高いので、他の昆虫には影響しない。環境負荷もほとんどなく、生物農薬としての有望だ。
◎体内の共生微生物に仮装してカメムシ共生器官に侵入
害虫の多くは体内に共生微生物を「飼育」し、餌だけでは不足する栄養素の供給してもらうなど、生存に不可欠な機能を共生微生物に依存している。カメムシ類はその代表例で、消化管の一部に存在する発達した袋状の共生器官を進化させ、その中に環境中から取り込んだ共生微生物を住まわせて共生関係を維持している。
今回の研究は、この共生関係を逆手に取り、カメムシの共生微生物を模倣して体内に侵入する新たな病原微生物を発見したことが成果を挙げた。この病原微生物は土壌から消化管に取り込まれ、共生微生物が持つものと同じ「ドリル泳法」という手段で共生器官へ到達する。この病原微生物は、共生器官へ定着後に異常増殖し、共生器官を破って体液中に広がり、敗血症を引き起こし、宿主カメムシを前記のように10日以内にほぼ100%、殺す。
◎今回の仕組みで宿主を殺す微生物の発見は初めて
共生微生物のふりをして共生器官に侵入して宿主を殺す昆虫病原微生物の発見報告は、今回が初めてだ。今回の成果は、環境負荷の低い新たな害虫防除技術の開発につながることが期待される。
この研究詳細は、2026年4月28日に『アメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)』にオンライン掲載された。
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