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2023年06月04日14:14

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精神0



想田和弘監督の「精神0」を鑑賞。前作の「精神」は随分前に観て、精神病と普通の状態の境界とは、ということについて考えさせられた覚えがある。今作は、精神病に加えて老いが大きなテーマとなっている。

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「自立は、依存先を増やすこと。希望は、絶望を分かち合うこと」(熊谷晋一郎)

まず、精神病について。山本医師の治療は他の先生とは異なっており、一部患者から絶大な支持を得ていた(これが客観的に他の医師による治療より優れているか否かはあえて言及しない)。そのことが結果的に患者を山本医師に強く依存させることになってしまっている。

精神病患者と精神科医の間では相互依存関係に陥ることがよくある、となにかの本で読んだ。患者の強烈な信頼(依存とも言い換えられる)と、医師が半ば宗教の教祖のような存在となり、医師側も患者(信徒)に応えようとすることで強く影響を受けるようだ。山本医師と患者の関係は、まさにその典型のように見えた。

また、ある患者の10年前の診察風景が挟まれていたが、外見上この10年で容体が悪化したように見えた。もちろん素人が数秒の映像でなにかを判断すべきではないのは当然だが、少なくとも自分のなかで「精神病における治療とは?『治る』とは?」という、前作を観た際の思考が再び繰り返されたのは確かだ。

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もう1つのテーマである「老い」については、山本医師の妻・芳子夫人を通して語られる。認知症が進んでおり、普通に日常生活は送れているものの、会話が成立していない、物事が理解できていない場面が多々あった。その芳子夫人に対して、何かを諦めたような、疲れ切った態度の山本医師が印象的だった。このあたりは人によって受け取り方が全くことなるのかもしれない。ただ自分には、有名人のコメントのような「愛」とか「やさしさ」「温かみ」のようなものよりもむしろ、義務、責任、苦痛、のような言葉の方が強く感じられた。

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自分はこの映画を手放しで「いい話」だとは思えないと感じたが、受け手の感じ方を制限しないことを意図した「観察映画」であり、このような感想も含めて監督の意図通りなのだろう。(珍しく)他の人と感想を語り合ってみたい映画だった。
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