かぞくへ

結婚を控えているボクシングトレーナーの青年は多くない収入の中から結婚式の費用を毎月貯金している。そんな折にボクシングジムの生徒で手広く飲食店を経営している男に故郷で漁師をしている親友を紹介し、契約を結ぶきっかけを作る。ところがその男は詐欺師で親友は手酷い目に遭ってしまう。責任を感じたボクシングトレーナーは結婚式資金のお金を親友に渡し、恋人との仲がこじれていき親友との関係も悪化してしまう。
「由宇子の天秤」で初めて知った春本雄二郎監督のデビュー作。つい先日に見て、こんな凄い監督がいたんだと驚嘆したのだが、実に良いタイミングで旧作を見ることが出来た。親友役を「由宇子の天秤」でも強烈な存在感を出していた梅田誠弘という俳優が演じる。同じ俳優なのに醸し出す空気感が全然違う。この人も凄い。
本作だが、「由宇子の天秤」に比べると演出に拙いものを感じるのだが、それでもやはり深い人間ドラマ。
何でも自分で背負ってしまう生き方の下手な男が主人公。何でこんなに純真なんだ、もっと上手く立ち回ればいいじゃないか、とヤキモキするのだがそう出来ない人なのだろう。人生色々損しそうな人。
最後の台詞にドーンと胸をつかれる。映画のタイトルもそういうことなのか。
春本監督と梅田さんの舞台挨拶があり裏話が聞けて楽しかった。映画では実に魅力的な梅田さんだが素のご本人は何のオーラもない普通の人。俳優って凄いんだな。今後はこのコンビが映画界を席巻していってくれるとよいのだが。