俺もお前も

『俺もお前も』1946年公開、成瀬巳喜男監督、横山エンタツ、花菱アチャコ、山根寿子、河野糸子、落合富子、ら。
子供の頃からエンタツ アチャコのコンビ名を何度も聞いて育ちました。が、彼等の漫才歴を鑑賞する事はあまりありませんでした。横山エンタツを父親に持つ花紀京の笑いを見て育った人間に取っては、どうしても今のテレビ芸人で腹の底から笑わせてくれる喜劇人が少なくなってしまい寂しい思いをしているところです。成瀬巳喜男がこのエンタツ アチャコを上手に使いこなしているのかどうか、よく分かりませんが、漫才方々 喜劇としてよく成り立っています。妹の縁談を気にしながら、自分の事は何処か吹く風、二十二歳の姉 初子を演じた山根寿子が落ち着きと美貌で素晴らしかったです。会社においては余興係としてエンタツ アチャコのコンビとしてやっと一人前、ついでに闇物資の運搬も手伝わされる父親(横山エンタツ)の待遇を知った時、妹が婚約相手の前で恥をかかぬ様に横山エンタツを強引に帰宅させながら、自分も手伝いに来ていながら悔し涙を流す山根寿子の健気さを味わうだけでもこの映画を観る価値あり、というもんです。親世代(戦前)と子供/妹世代(戦後)の狭間で揺れ動くのが長女の山根寿子であり、終戦直後の歪みを体現しているようです。しかし、ここまでさせる性悪社長役の菅井一郎っていったい。