mixiユーザー(id:235184)

2018年06月27日06:41

128 view

同一労働同一賃金

 一見もっともらしい言葉ですが、この「同一労働」とは「労働時間」を示しています? それとも「労働の成果」? もしも「同一成果同一賃金」だったら、「高プロ」だけではなくて「すべての労働者」が「(残業の有無ではなくて)常に成果だけを評価される」ことになりそうですが。

【ただいま読書中】『復権 ──池永正明、35年間の沈黙の真相』笹倉明 著、 文藝春秋、2005年、1143円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4163672001/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4163672001&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=dfbed248b4eefa09e0523f0a43288118
 日本プロ野球の「黒い霧事件」(1970年)はもうずいぶん前のことになります。当時としては大スキャンダルで、Wikipediaにも詳しく書かれていますが、本書ではそれをさらに突っ込んで事件屠蘇の背景を紹介します。当時の暴力団がいかに野球界に食い込んでいたか、球団によってマスコミ対応が上手いところと下手なところで以後の選手の運命がずいぶん変わったことも、本書ではよくわかります。
 野球選手が、野球賭博だけではなくてオートレースの八百長にも関係していたことを読むと、最近の大相撲での野球賭博の話を連想して、時代が変わってもやっていることは同じなんだなあ、という感想も私は持ちます。
 1996年たまたま福岡に行った著者は、復権運動が盛り上がっている池永正明のことをこれまたたまたま思い出し、彼がやっているバーに入ってみます。その出遭いで、著者は言葉では説明しがたい「衝撃」を受けます。そしてその衝撃は「この男のことを書きたい」という欲望に転化します。しかし、著者は「何を書くのか」がわかりません。だからそのことを軽々しく池永に言い出すことができませんでした。そして池永はそういった著者を警戒します。その場限りで「売れる記事」を書き散らし、その後の検証など一切しない無責任な「マスコミ人」に対する不審と警戒を隠しません。
 「池永正明復権運動」は永久追放の直後から始まっていました、96年の下関市(池永の出身地)では18万人の署名を集め、池永本人の嘆願書も添えてコミッショナーに提出されました。結果は「却下」。ただその理由に書かれている文章が、なんとも貧しい日本語です。実際に読んでもらったら「貧しい」の意味はわかるでしょう。それに対しての「反論」は実に真っ当な日本語となっています。
 「黒い霧」事件を裁定した当時のコミッショナー委員会の裁定書には「奇妙な日本語」が並んでいます(いろんな冤罪事件で、最初に無理やり「有罪」とした判決文のトリッキーさに通じるものを私は感じます)。「ブラックソックス事件」でも明らかに「敗退行為」に加担していないことが明らかな「シューレス・ジョー」を無理やり「有罪」にしたのと同じ奇妙な論理がここでも機能しているようです。一番目立つ有力選手(それも、在京の有力球団ではなくて地方の弱小球団のエース)を無理やりにでも「有罪」にしたら「一罰百戒」で他の「本当にブラックな選手」が萎縮してそれ以降八百長をしなくなることを期待して、ということだったのでしょうか。でもその「一罰百戒」の対象が「無罪の選手」で、倫理的に良いんです?
 著者はここから本気で動き始めます。「お願い」ではらちが明かない、「闘い」しかない、と。そのため、絶望して解散を考えていた復権委員会のメンバーに著者は連絡を取ります。「お願い」ではなくて「法廷闘争」の路線で行こう、と。その準備の段階で、作家の赤瀬川隼は印象的な手紙を著者に返しています。そこには「この問題は池永や我われから“嘆願"するものではなく、むしろプロ野球機構から池永に謝罪すべき性質の事件だと思ってきました(当時の杜撰な調査と不当な処分、それにその後の無責任な放置)」と書かれています。
 新しい「池永復権会」の代表は著者、相談役として著者の人的ネットワークを生かして野球好きの文壇人が多数参加します。ただ著者はプロ野球関係者は相談役としては入れないことにしました。最終的にはプロ野球機構を相手に訴訟を起こす覚悟ですから、その業界で飯を食っている人に迷惑をかけてはいけないだろう、という判断です。ちょっと異色に見えるのが、大橋巨泉、武田鉄矢、美樹克彦、尾崎将司……だけど彼らにもそれぞれに熱い思いがありました。
 多くの人がそこまで池永に肩入れをするのは、彼が「200勝300勝はできたはずの大投手」だったからだけではないでしょう。多くの人の証言から、彼が真面目で「侠気」に溢れた人物であることがわかります。そんな人物だからこそ、後ろ指を指さずに支えようとする人が続々出現するのでしょう。
 復権反対派は陰険な手を使って運動の足を引っ張ります。しかし運動はさらに大きくなり、とうとう話は国会にまで。しかしコミッショナーは、国会議員懇談会からの招致を拒絶。再度の請願もあっさり拒否。
 あまりに頑なな態度に、著者は「何か特殊な事情があるのではないか」といぶかります。もちろんそれは明らかにはされませんが、著者の推測は「いかにもありそうなもの」です。で、その推測が当たっているとしたら「野球界の暗部」は相当問題が根深い(現在でも残っている)、ということになります。それは、困ったものですねえ。


0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年06月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930