mixiユーザー(id:235184)

2018年06月10日18:39

198 view

長く働く

 経営者が「毎日長時間働け」と従業員に強く求めたら、従業員は疲弊して次々うつ病になったり辞めたりするでしょう。
 経営者が「何年も長く働いて欲しい」と職場環境や働き方に気を配ったら、やる気のある人はますますやる気を出してそれで長く働いて、業績は上がるでしょう。

【ただいま読書中】『ハラスメント時代の管理職におくる職場の新常識』樋口ユミ 著、 朝日新聞出版、2017年、1200円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4021002596/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4021002596&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=9f27df3362fd8761ce34546aa9df08df
 アメリカで「セクシュアル・ハラスメント」が言われるようになったのは1970年代初め。76年には司法省で働いていた人が上司を訴え勝訴、80年に雇用機会均等委員会(EEOC)がセクハラのガイドラインを定めます。日本での初の裁判は89年。92年の「新語・流行語大賞」の金賞に「セクシュアル・ハラスメント」が選ばれます。
 「パワー・ハラスメント(パワハラ)」は日本生まれの言葉です。それまでセクハラ相談を請け負っていた「クオレ・シー・キューブ」という会社が2001年にこの言葉を提唱しました。2007年に初めてパワハラによる自殺が労災と認定、リーマン・ショックの2008年以降相談件数が爆発的に増加します。
 ハラスメントの本質は「相手が苦しんだり悩んだり理不尽な思いをすること」です。「した側」には自覚がないことがほとんど。
 セクハラは男女雇用機会均等法で定められていますが、2007年に対象者に男性も含まれることになりました。マタハラについては、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法で明確に禁止されています。パワハラについては法的な定義はありませんが、判例の積み重ねで少しずつ「定義」が明確になってきているところです。
 2016年厚生労働省が初めて本格的なセクハラの実態調査を行い、働く女性の3割がセクハラをされた経験を持っているが、被害を訴えた人はその10%だけ、つまり法律で禁止されているのに社会にその行為が横行しそのほとんどが泣き寝入りになっていることがわかりました。
 裁判になると、判決は年々厳しくなる傾向があります。ハラスメントをしたと認定された人と企業にとっては厳しい結果が生じます。ハラスメントは、職場の雰囲気を悪化させ生産性を低下させます。また、人材の流出を招きます。ところがハラスメント対策をきちんとしている企業はまだ半数。快適な環境作りや生産性を上げることに興味がない経営者や管理職が多くいる、ということなのでしょう。
 ちょっと気の毒に感じる事例も紹介されています。若い女性を大量に採用したら上司がコミュニケーションは取りたいが若い女性との会話が不慣れで、話題に困ってついつい相手のプライベートなことを根掘り葉掘り聞いてしまった。こういった場合「質問に答えろ」の前に「こういった質問は不快か?」の確認から始めた方が良さそうです。
 セクハラの根底には「ジェンダーハラスメント」(女だからお茶くみをしろ、女子力が高いのは素敵、など)があります。男女雇用機会均等法施行規則には2014年に「セクハラの背景には、性別役割分担意識に基づく言動がある」という内容の文言が加わっています。うわ、このジェンダーハラスメント、私自身も子供の時から刷り込まれています。これはよほど気をつけないと、うっかりその気がなくても「加害者」になる可能性があるということです。というか、すでにその行為をしているかもしれません。取りあえず否定形ではなくて肯定形で「相手を『個人』として尊重する」で生きていきましょう。
 セクハラの場合「セクハラされた人が不快に思っているか」が基本的な判断基準です。しかしパワハラの場合は「された人が不快に思うか」だけではパワハラとは判断されません。「職務上での地位や人間関係などの職場での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与えられたり、職場環境を悪化させられたりする行為」がパワハラです。「パワーの不均衡」を利用して「業務の適正な範囲を超えた苦痛」が生じている、ということは、業種や企業文化ごとに「通念」に照らしての判断が必要になります。物理的な行為(殴る蹴る)はそれ自体犯罪だからわかりやすいのですが、わかりにくいのが精神的な攻撃。2015年に都道府県労働局によせられたパワハラ相談は66,566件でしたが、その中で精神的な攻撃が一番多くおこなわれているそうです。もちろん「仕事の指導」は必要です。ポイントは「その指導で部下が伸びているかどうか」。児童虐待で「残酷親」がよく「しつけ」を口実にしますが、それが本当に「しつけ」であるかどうかには親の口述以外の判断が必要なのと似ています。
 ハラスメントの加害者になりやすい人に「優秀」「完璧主義」があるそうです。セクハラの場合にはそれに「強いジェンダー意識」が加わります。
 パワハラで「自社」で解決が難しいのが、重要な取引先からのパワハラです。自分が有利な立場であることを利用しての言いたい放題やりたい放題。担当社員とその上司だけでは解決は不可能ですから、会社として腹をくくっての対応をしなくちゃいけませんが……できる会社がどのくらいあるのかな? そういえば監督官庁の言動にもこれと同類のものがありますね。人格攻撃のようにあまりにひどいものは、裁判にするとか、ビデオで撮影しておいてネットで公開したら効果的かな?
 近年増加している「新しいハラスメント」として、マタハラやケアハラスメントがあります。また、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)に対する差別的な言動がセクハラになることが2016年に厚生労働省の「セクハラ指針」で示されました。さらに「スメルハラスメント」「エイジハラスメント」「ソーシャルメディアハラスメント」……いくらでも問題は出てきます。さらに「逆ハラスメント」もあって、問題はいくらでも複雑化していきます。しかし「それはパワハラです」と言い募ることで上司を黙らせる「モンスター部下」がいるのですが、そういった人がもしも出世したらどんな上司になるんでしょうねえ。というか、会社がつぶれるんじゃないかしら。
 巻末にセクハラとパワハラのセルフチェックがあります。私は幸いセーフでしたが、だからと言って安心はできません。安心と慢心は紙一重ですから。


0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2018年06月>
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930