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2018年06月03日07:59

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密室の名探偵

 冤罪で逮捕された人が、取り調べの過程で警察官が漏らす情報を元に推理をして、とうとう真犯人を見つけてしまう、なんて作品はありませんでしたっけ? なかったら作って欲しいな。

【ただいま読書中】『ストーカー』A&B・ストルガツキー 著、 深見弾 訳、 早川書房(ハヤカワ文庫SF504)、1983年(96年8刷)、505円(税別)
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 「来訪」から13年。異星人がやって来てさっさと立ち去った跡は「ゾーン」と呼ばれる、特殊な地域に変貌していました。そこは、一見「地球環境」に見えますが、局所的に地球とは違う物理法則などが支配し、そこに踏み込んだ人間の命を容赦なく奪う場所になっています。しかしそこに残された「異物」は、科学者には「科学」の、ストーカー(狩りで獲物に忍び寄るように、こっそりとゾーンに出入りする者たち)は「金儲け」の対象として人気がありました。しかし「ゾーン」に出入りする者は、たとえ命が助かってもその子供に異常が出る場合が多くありました。
 かつてはストーカーで、今は国際地球外文化研究所に勤務するレッドは、正式な調査隊の一員としてゾーンに入ります。命を賭けて持ち出そうとするのは「中身が詰まった〈空き罐〉」。それ以外にも様々な意味がわからないものが持ち出されますが、その中には人類の役に立つものもあるのです。
 レッドは結局また非合法なストーカーに戻ってしまいますが、それはこの物語の本筋ではありません。本書の本当の主人公は、人類の理解を拒絶する異文明の技術とのファーストコンタクトそのものです。この「ゾーン」に対しては様々な解釈が登場しますが、一番衝撃的なのは「路傍のピクニック」説です。人がピクニックをして帰った後、そこに残されたゴミなどを昆虫や野生動物が“理解"できないのと同様に、異星人は単に“ピクニック"をしただけで、その後のゴミためを人類はあさって「これはなんだ?」といぶかりながらも利用できるものはしている、という仮説です。これだと、人類があまりに卑小な存在ということになって、寂しいんですけどね。でも、この宇宙で人類が唯一無二の偉大な存在、という仮定にもまだ根拠はないわけで、そういった空想を思いっきりできるSFというジャンルが、共産党支配下のソ連でも人気があったというのは面白い現象です。


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