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2018年05月13日17:12

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明るい街

 太陽が西の空を赤く染める少し前、少し小高いところから東の方向を眺めると、街の建物のこちら側(西に面した側面)がきれいに明るく耀いています。太陽が中天にある昼間は壁はむしろやや陰っているのに、夕方の一瞬、西の面は精一杯耀きます。
 だけどそのことに建物の中にいる人は気づいていません。もったいないことです。ただ、そう思う私もさっきまで建物の中でそのことに気づかずにいたのですが。

【ただいま読書中】『ソラリス』スタニスワフ・レム 著、 沼野充義 訳、 早川書房(ハヤカワ文庫SF2000)、2015年、1000円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4150120005/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4150120005&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=6c6dc39b825da6de8a66a25441f2e0e1
 『ソラリス』に私が初めて出会ったのは、高校の時だったか、その後か、小説だったか映画だったか、もう記憶は曖昧模糊として、それこそソラリスの海のようになってしまっています。本書は、ポーランド語オリジナルからの完全翻訳版で、もしかしたら私の内部にある「ソラリス」とは別ものかもしれません。まあ、読んでみましょう。
 惑星ソラリスを研究するためのステーションに到着したケルヴィンは「混乱」がステーションを支配していることを知ります。私はすでに何が起きているのかを知っていますが、それでもこの不気味な雰囲気の描写には怯えさせられます。SFというよりはホラー小説のオープニングです。
 惑星ソラリスは表面のほとんどを「海」に覆われていました。そしてそれは、不安定な惑星の軌道を安定させる能力を持った「生命体」であることがわかり、人類はその謎を解こうとステーションを設置しましたが、その試みは失敗と挫折の連続でした。補充要員としてステーションに送られた心理学者ケルヴィンは、そこで一人の隊員が死亡し、他の二人は不思議な引きこもり状態になっていることを発見します。さらに自室には、10年前に自殺したはずの恋人ハリーが訪問してきます。錯乱するケルヴィンですが、すぐに、他の二人のところ(そして自殺した隊員のところ)にも「来訪者」がいることに気づきます。それは、それぞれの人の心で一番大きな傷に関わる人のようでした(少なくともケルヴィンにとってはそうです)。
 隊員は科学者ですから、科学の力で謎を解明しようとします。しかしそれは「迷路」でしかありませんでした。ハリーの体は「原子」ではなくて「ニュートリノ」で構成されているようです。一体それでどんな「人体」が実現できるのでしょう?
 ところで、人は「記憶」で構成されているものです。記憶が失われたら人は取り乱しアイデンティティーの危機を迎えます。しかし、「忘れたい記憶」が「実体」として目の前に現れたら、人はそれをどう扱えばいいのでしょう?
 本書は「人智が通用しない“もの"とのファーストコンタクト」ものに分類されることが多い作品ですが、私は「人間とは何か」についての思索小説として読みたい気分です。


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