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2018年03月06日06:44

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ものがたり

 「物語」という言葉に私は慣れてしまっていますが、つくづく眺めると不思議です。「語る」とあるから「本に印刷された物語」も本来は「音読」するべきものなのでしょうが、ではその場合語られる「物」とは一体何なのでしょう?

【ただいま読書中】『聞いて読む初版グリム童話』グリム兄弟 著、 吉原高志・吉原泰子 編、2010年(13年7刷)、白水社、2200円(税別)https://www.amazon.co.jp/gp/product/4560085358/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4560085358&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=af060d59502003fc02f2d83d5a2c5d14
 「グリム」の初版から「かえるの王さままたは鉄のハインリッヒ」「ラプンツェル」「ヘンゼルとグレーテル」「いばら姫」「白雪姫」「千匹皮」「子どもたちが屠殺ごっこをした話」を、ドイツ語の原文と日本語の対訳を並べて掲載し、さらにドイツ語の朗読CDをつけた、という本です。

 「ヘンゼルとグレーテル」は、食い詰めた両親が二人の子供を森の奥に捨てる、という「残酷」なお話ですが、でも、「捨てる」だけで「食わない」のですから、まだそこまで残酷とは言えないのでは? 実際に悪い魔女は子供を食べようとしているわけで、昔のひどい飢饉の状態では食人だって行われていたはず。ちなみに、私が幼少期に読んだ「グリム童話」では、ヘンゼルとグレーテルの母親は継母でした。ところが初版では実母なんですね。
 「いばら姫」は私にとっては「眠れる森の美女」です。ところで本書で同時に紹介される「イタリアの『ねむり姫』」はグリムより過激です。ターリアという美女が眠り込むと、そこにやって来た王が犯して妊娠させ、寝たまま生まれた双子を王妃が料理しようとしたりするのですから。いくら昔話でも、同意のない強姦でしょ? フランスの「ねむり姫」(ペロー版)でも「双子」「食人」が登場します。
 「白雪姫」でも「継母」ではなくて「実母」です。「この上なく美しい子に恵まれますように」と自ら願って生まれた白雪姫なのに、魔法の鏡が「白雪姫の方が1000倍美しい」なんてしれっと言うものですから嫉妬で目がくらんでしまう、という、ある意味可哀想な存在です。しかも最後には、白雪姫の結婚バーティーで真っ赤に焼けた鉄の靴を履かされて死ぬまで踊らされるのです。犯した罪は罪として、罰がえぐいなあ、と感じます。
 「子どもたちが屠殺ごっこをした話」では、ブタの屠殺を真似た子供たちが、実際にお互いを殺してしまう、というお話で、初版にだけ含まれているそうです。19世紀の新聞だったら大喜びしそうなネタですが、「子供向き」ではない、という反省がグリム兄弟に(初版出版後に)生じたのでしょう。
 もっともグリムの時代(19世紀初め)、「子供」の概念は現代とはずいぶん違っていたはず。『〈子供〉の誕生 ──アンシャン・レジーム期の子供と家族生活』(フィリップ・アリエス)では「中世」では「子供」は「小さな大人」とされていますが、その概念はまだ生き残っていたのではないでしょうか。しかも当時は「物語」は文字通り「語るもの」だったはず。だとすると「童話」というものを今と同じ捉え方をしない方が良さそうな気がします。


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