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2017年10月22日07:38

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実りの秋に台風がやって来る

 数日前、知り合いの農家の人が収穫を急いでいました。台風が来る前に、ということだそうです。
 せっかく手間暇かけてやっと収穫、という直前に台風で荒らされたら泣くに泣けませんから、本当は数日後に収穫したかったんだけど、なんだそうです。狩猟採集よりも農業の方が安定している、という歴史的なイメージを持っていましたが、農業ってけっこう“博打”の要素も大きいのかな?

【ただいま読書中】『栗の文化史 ──日本人と栗の寄り添う姿』有岡利幸 著、 雄山閣、2017年、2800円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4639024649/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4639024649&linkCode=as2&tag=m0kada-22&linkId=98090e26b42080ac79349022773edf42
 人の食糧で大きな比重を占めるのは「澱粉質」ですが、ざっくり言って、縄文人は「木の実」、弥生人は「草の実」から主に澱粉を得ました。
 2万3000年前、地球は氷河期で海面は現在より100m以上低下していて対馬海峡は陸橋となり、大陸から人が日本に移住してきました。このころ沖縄まで針葉樹林でドングリはまだありません。1万5000〜1万2000年前ころから地球温暖化が始まり、九州から落葉広葉樹林が成立していきます。8000〜6000年前に日本海に対馬海流(暖流)が流れるようになり東日本にも照葉樹林が発達。6000〜5000年前の縄文遺跡からは東日本でも「胡桃と栗」のセットの木の実食が出土するようになります。縄文土器は、生の澱粉(β)を熱と水でアルファ化するために重要でした。
 縄文遺跡で栗の実が出るのは、西日本より東日本の方が多いのですが、栗の花粉の出土が少ないところは野山で集め、花粉が多い遺跡は周囲に栗林があった、という推定が本書で示されています。青森市の三内丸山遺跡では、縄文早期にはナラ林だったのが中期には栗の木が増え、中期末には栗の花粉が90%を占めるという“異常”な花粉構成になりました。縄文人はナラ林を破壊して栗畑にしたようです。
 稲作の普及によって栗の地位は低下しました。同時に建築部材としても、クリ材が減少してクヌギ材が多用されるようになります。ただ、ドングリはあく抜きをしないと食べられませんが、そういった準備が不用の栗は一定の人気を保ち続けました。儀礼や貢納品としての役割もあるし、搗栗(かちぐり)は「搗」を「勝ち」と読んで、室町時代から武士の出陣帰陣儀礼に用いられました(平和になった江戸時代には庶民の婚礼の膳に祝い物として乗せられるようになります)。
 江戸中期にクリ材は、堅くて腐りにくいことが好まれ、建築用材として注目されるようになりました。歴史は繰り返すんですね。そのため、藩によっては「七木(勝手に切ってはならない木のリスト)」に栗を入れるところがありました。
 奈良時代に中国から入った「唐菓子(もち米の粉、小麦粉、大豆、小豆などで作る菓子)」は江戸時代には単に「菓子」と呼ばれるようになり、果実は「木菓子」と呼ばれました。やがて江戸では果実を「水菓子」上方では「果物(くだもの)」と呼ぶようになります。享保三年出版の『古今名物御前菓子秘伝抄』には、栗の菓子のレシピが二つ(栗の粉餅と栗羊羹)が載っています。「カロリーを得るための食糧」だった栗は、お菓子になったのです。
 民話にも栗はいろんな役で登場します。栗の花と田植えについて、あるいは栗の収穫と田の作物の収穫の関係についての諺や言い伝えも日本各地にあります。かつての日本では栗は身近な存在だったようです。栗の食べ方もいろいろ紹介されていて、どれも食べてみたくなります。
 明治になってからクリ材は、鉄道の枕木として重宝されました。そのため、江戸時代に大切に保存されていたクリ林は大伐採をされてしまいます。さらに昭和16年ころからクリタマバチが全国に蔓延し、栗の木は次々枯れていきました。クリタマバチに抵抗力のある品種が見つかり、やっと日本の栗生産は再出発をすることができましたが、以前よりも収量は激減していました。
 栗のお菓子、栗ご飯、栗おこわ……どれも私は好きですが、皮を剥くのが大変なんですよね。我が家には栗の皮むきハサミがあるので包丁でやるよりはずいぶん楽なのですが、それでも数がたくさんあると握力が落ちてしまいます。体をもっと鍛えないと、ダメかな?


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