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2016年08月18日07:26

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宰相は象徴より偉し

 戦争の反省 する(天皇) しない(首相)
 公務 もう勘弁してほしい(天皇) 勘弁しない(首相)

【ただいま読書中】『少年検閲官』北山猛邦 著、 東京創元社、2007年、1700円(税別)
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 20世紀後半から「焚書の時代」(書物の所持は許されず、発見されたらその家ごと燃やされる。教育はラジオ。本もノートもないから宿帳などは黒板)に突入した地球は、繰り返す洪水や津波で文明は荒廃しつつありました(焚書の理由は「戦争や犯罪は本によって人びとに広まるから、本をなくせば平和になる」です)。そんな日本に英国からやって来た少年クリスは、たどり着いた森の中の村で「探偵」「首無し屍体」に出会います。ただし、探偵が事件を解決するのではなく、探偵本人が出会った村人を次々殺して首無し屍体にしているのです。村人が誰も知らない「探偵」とは誰か、殺人の動機は? 村を取り囲む壁の意味は? 壁があるのになぜ村の外から人びとは村にたどり着けるのか?
 書物の前に、一時期音楽が禁止されていた時期もあったそうです。その禁令はやがて緩められましたが、そのためこの地球では音楽家は珍しい存在になってしまいました。そして、こういった文化的な禁令によってか、地球環境の悪化によってか、人びとは感情を抑圧するようになっています。さらに「(書物がないため)ミステリ」という概念も人びとは持たず、そのためか首無し屍体でさえ「自然現象」に分類してしまっています。
 「ミステリという概念」を欠いた世界、というのは私には新鮮なアイデアでした。しかもそこで「密室殺人」が起きます。衆人環視の小さな湖、湖上に浮かんだ小さなボートがその現場です。「探偵」が殺人(または首無し屍体の製造)を行い、そのまま忽然と姿を消したのです。超自然現象か、あるいは、きちんとした“トリック”のある事件なのか。「ミステリの最期」を求めているクリスは、その「ミステリ」そのものに巻き込まれてしまいます。しかし、どうしてクリスはミステリを求めるのか、その動機は本人にも曖昧なまま、少年検閲官エノが村に到着します。
 さて、ここからの謎解きが何ともロジカル。異様な世界の異様な事件の解明に、実に真っ当な推理が用いられています。さらにクリスの動機の解明が同時並行的に進められ、最期にクリスは「この世界を変えよう」という重大な決心をします。
 謎解きが始まる直前で「探偵」の行動の“意味(「探偵」が何を作ろうとしていたのか)”はある程度私にもわかりましたが、その“動機”まではわかりませんでした。いや、ちゃんと伏線はあったんですけどね。
 不思議な余韻を残す作品です。「真犯人はお前だ」と指さしたら、その先には「ミステリ」がちゃっかり座っていた、といった感じ。続編もあるそうなので,図書館の書庫を漁ってこなくては。


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