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2016年08月04日22:39

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足音

 最近静かなところで私は自分の足音が聞こえるようになりました。以前はそれほどなかった足音がするようになった、ということは、歩くのに使っているエネルギーの一部が音エネルギーとして無駄に使われている、つまり私の歩き方がどこか変化した、ということを意味します。単に年を取って下半身の筋力が弱ったかどこかの関節が硬くなってきたのかもしれません。やれやれ、運動を意識的にしなくちゃ、だめかな。

【ただいま読書中】『なぜ、あの「音」を聞くと買いたくなるのか ──サウンド・マーケティング戦略』ジョエル・ベッカーマン+タイラー・グレイ 著、 福山良広 訳、 東洋経済新報社、2016年、2400円(税別)
https://www.amazon.co.jp/gp/product/4492557687/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4492557687&linkCode=as2&tag=m0kada-22
 「音が人に大きな影響力を持っている」ことは「音がない世界」を想像したらわかります。
 生まれつきひどい難聴だった人が「特製補聴器(人工内耳のことでしょう)の埋め込み手術」を受けた瞬間に聞こえたのが、「外界の音」だけではなくて「自分の声」「自分の体内の音」だった、というのは意外です。あまりにそれが当然と私が思っているからでしょう。「自分は音を聞いている」と思っていますが、実はきちんと聞いていないことがとても多いようです。
 人間は自分が聞いている音に対して無関心です。それを証明するのは簡単で「2分間目を閉じて、聞こえてくるすべての音に意識を向けてみる」ことを著者は勧めています。私もやってみましたが、静かな部屋でも意外な音がいろいろ聞こえてきて、それをふだんは無視していることにちょっと驚きを感じました。
 聴覚情報は情報量が豊かで、人の記憶に強く結びつきます。だから、懐かしい音を聞いた瞬間古い記憶がわっと立ち上ることがあります。当たり障りのないBGMではなくて、こういった個人的な記憶を喚起する「音(音楽)」を売り場に流したら、消費意欲を刺激する(あるいは客が顔を見合わせてにっこりする)ことが可能です。
 本書には「音のブランディング」という聞き慣れない言葉が登場します。「音を戦略的・戦術的かつ俯瞰的に用いることで目に見える成果を出そうとするマーケティング手法」、つまりは「音や音楽でブランドをコミュニティーに浸透させる」ことだそうです。そのためには「優れた楽曲を採用する」だけでは不十分です。“それ”が聴き手にきちんとした戦略的な機能を発揮できるかどうか、が大切なのです(たとえばホンダと日産のコマーシャルの比較、といった、具体的な成功例と失敗例の提示があります)。このブランディングの典型例が「国家(ナショナル・アンセム)」です。つまり私たちは「音のブランディング」にまったく無知なわけではありません。アンセムには主旋律があり、それを編曲することで様々に応用が利きます(たとえば映画「007シリーズ」の“テーマ曲”)。主旋律を聴いただけで我々はそれが何であるかと自分の思い出や感情をすぐ思い出せます。そのアンセムを短くしたものがソニックロゴでテレビCMの最後に数秒間流されます。ただ、著者から見ると、アンセムやソニックロゴを有効活用している企業はほとんどないそうです。やる気がないのか、ストーリーを語るテクニックを知らないのか、そもそも語るべきストーリーがないのかもしれませんが。著者が作った一つの例として「AT&Tのソニックロゴとアンセム」が挙げられていますが、その制作過程は本当に複雑です。作品はあんなに短いのにね。
 ホラー映画で真に恐いのは「音」だそうです。試しに耳を塞いでホラー映画を見たら、けっこう笑えるそうです。一度やってみようかな。せっかく恐い映画を選んで観るのに、もったいないとも思いますが。
 「音を使う」といえば「音を発生させる」ことばかり思いますが、著者の会社では「静寂」を重要視しているそうです。だから顧客の環境から意味のない音や訴求力のない音を除去することにまず注力するそうです。そうそう、ディズニーはこの「音(と静寂)」の使い方が抜群に上手いそうです。ファンの人は来園したときに耳を澄ませてみたら、また新しい楽しみが発見できるかもしれません。
 こんな本を読むと、日本人で良かった、と思います。落語といった話芸が身近にあるし、落語や芝居などでの「間」の重要性も最初からわかっているので、本書の主張がわかりやすいものですから。


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