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2015年01月03日08:09

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巨人族の問題

 ギリシア神話から最近では進撃の巨人まで、地球上にはずっと巨人が闊歩しているようです。ところで、体がでかいと出すものもでかいですよね。トイレは何でどう造れば良いのでしょう。

【ただいま読書中】『ワイルド・ソウル』垣根涼介 著、 幻冬舎、2003年、1900円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/434400373X/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=434400373X&link_code=as3&tag=m0kada-22
 突然「アマゾン牢人」という言葉が登場します。戦後に日本外務省は大嘘の募集要項でアマゾン移民(実際には棄民)を実行しました。移民たちは、雨期の地獄で原始人のような生活を強いられます。その中に衛藤という青年がいました。2年間の苦闘で、妻と弟と希望を失い、衛藤は逃げ出します。地獄からまた別の地獄へと。衛藤は、棄民からアマゾン牢人になったのです。
 そして突然舞台は現代の日本へ。滅亡したアマゾンの入植地で生き延びた人たちが東京に集まり、日本政府を敵とした“ゲーム”を始めます。腑抜けた外交をおこなう無責任な官僚たちに生き恥をかかせて復讐しようという計画です。しかしメンバーはわずかに3人(とブラジルに一人)だけ。使うのは、釣り糸と花火と……え? ピストルにマシンガン? 一体何を?
 派手なサンバのリズムに乗って、早朝4時の外務省にとんでもないことが起きてしまいます。しかしそれは「第一段階」でしかありませんでした。
 「若い女子アナ」から制作側にポジションチェンジをした井上貴子が、事件の前から事件後にかけて、公と私の軋轢からでしょう、おそろしく変容する姿が鮮烈な印象です。内面の葛藤を越え「それは、私にも分かりません」と言ったときの分厚いプレッシャーを私も感じてしまいます。
 そうそう、「政府の側の人間の言い分」もちゃんと取り上げられています。ただそれを読んでいたら「オレオレ詐欺の連中も、似たような言い訳(逆らえなかった、生きるためには仕方なかった、騙される方が悪い、など)を言っているんだろうな」と思うだけでしたけれど。
 「第一段階」は、映画にしたいような「絵になるシーン」でした。しかし事態が「第二段階」になると、眉をひそめたくなります。それは人倫にもとるだろう、と。ただ、「お気楽なエンターテインメントを求める私」は眉をひそめているのですが、「『単純な悪の権化とか正義の味方、の“二分法”は存在しない』と感じている私」や「読みながら『国家と国民の複雑な関係』とかのことまで考えている私」は、ここまで“道を外す”のもアリだろう、と感じています。事実に基づいた、重層的で複雑なフィクションです。
 最後のカウントダウンも、いくつもの“ストーリー”が絡み合って、緊張感を盛り上げます。そして最後の衝撃と不思議な解放感。繰り返される解放感。
 本書は、大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞を受賞したそうですが、賞があってもなくても、私の好みの作品であることに間違いはありません。お勧めです。


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