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2015年01月01日21:42

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テープを戻す人の位置

 ニュー・イヤー駅伝はすごい戦いでした。箱根駅伝で名前を覚えた人たちも次々登場してその成長ぶりに安心しました。
 気になったのがゴールシーンです。晴れ着を着た2人の女性(仮にaさんとbさん、と呼ぶことにします)がテープを持っていて、選手がそこに飛び込むとaさんはしっかりテープの端を握りbさんが手を離して選手を通過させます。当然bさんが持っていたテープの端はひらひらとaさんの側へ。ふだんならbさんが走ってそれを追いかけてテープを捕まえるとまた元の位置に戻るのですが、さすがに振り袖ではそれはできませんから、トレーニングウエアの人(仮にcさん、とします)がその代理をします。私が気になったのは、cさんがbさんの所にいることです。選手が通過するとcさんはダッシュしてテープの端を捕まえ、また元の位置に駆け戻ってbさんに渡します。それが私には気になります。だって、最初からcさんがaさんの側にいたら、テープの端は“自分から逃げる”のではなくて“自分の方に向かってくる”わけです。さっとそれを捕まえたらダッシュしなくても小走りでbさんのところに戻れます。そしてまたダッシュしなくても小走りでまたaさんの方に戻って待機すれば良い。どちらにしても走る距離は変わらないのですが、余裕が違います。また、選手が次々ゴールに入ってくる場合、うっかりcさんがダッシュをすると選手の進路と工作することになって危険です。
 細かいことなんですけれどね、事故の元になりはしないか、とちょっと心配なのです。

【ただいま読書中】『景徳鎮からの贈り物』陳舜臣 著、 新潮社、1993年、1748円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4103347082/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4103347082&link_code=as3&tag=m0kada-22
 中国を舞台にした「名工たちの物語」です。
 しかし巻頭の「金魚群泳図」で、まず著者自身が登場して私は驚きます。エッセイなのか?と。たしかにエッセイ風なのですが、そこからちゃんと小説になります。ここで取り上げられるのは蘇州の刺繍ですが、時代背景は清とヤクーブ・ベクとの戦争です。クロパトキンとか李鴻章の名前も登場します。ああ、この時代にはこんな所にいたんですね。
 「挙げよ夜光杯」では、著者が一泊した酒泉で作られる夜光杯が“主人公”です。国民党と共産党が戦争をしていた時代。意外な出会いと意外な人生の物語が聞き書きの体裁で描かれますが、ちゃんと伏線が張ってあるのがさすがです。
 「波斯彫壇師」……木彫りの名人の話です。時代は8世紀、安禄山の乱のころのことです。波斯(ペルシア)人は当時の中国では「ふしぎのわざ」を使う人たちとも見られていました。そのペルシア人が造った不思議なカラクリが引き起こした事件の顛末は……
 「景徳鎮からの贈り物」……政変で家族の罪に連座して職を解かれた(元)高官が、自分の心の中にある「うつくしいもの」を現実のものにしようとします。美しい乙女のほんのりあからんだ頬の色、赤になる前の赤、それを陶磁器で実現したい、と。しかし、様々な人の思いが交錯した結果、出来上がったのは美しくも危険なものでした。
 「墨の華」も、これまでの物語と同様、酷薄な運命に翻弄される人がじっと耐えて自分の心の中に「美のイデア」を結晶させ、それが実現できるときに一挙にその結晶を世の中に解き放つ物語が展開されます。
 「景秦のラム」はこれまでの話とは毛色がずいぶん違います。明を攻めるオイラート・モンゴルがまんまと英宗を捕虜にした「土木の変」が、なんと遠くオスマン・トルコの行動に影響を与え、その結果陥落したビザンティンから逃げ延びた七宝の職人が明に渡ってきて……という、壮大な物語なのです。
 「湖州の筆」は筆職人。科挙を目指していたのに元に征服されて人生の目標を失った人の人生と、彼を支える意外な人たちの物語ですが、ここでは元で採用され(そしてほとんど一般には使われなかった)パスパ文字が本当の“主人公”かもしれません。
 そして最後に舞台はまた蘇州に戻ります。ここで登場するのは贋作の名人なのですが、彼の行動の真の目的とそのやり方には、読んでいて唖然とするばかりです。
 陳舜臣さんの作品は、やはり読んでいて安心感があります。マイ・フェイバリットです。


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