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2026年01月18日18:03

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映画「ワーキングマン」

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新春、一本目の劇場鑑賞は楽しみにしていた『ワーキングマン』。盟友P氏の事務所で打ち合わせを終えた後、久々に彼と二人で映画を観た。他の作品にスクリーンをとられているのか、上映回数が少ないうえに、わずか80席の小さめのスクリーンなのは意外だった。

 昨年の同時期に公開されたのが『ビーキーパー』で、本作も同じ監督と主演。てっきり、「職業シリーズ」で定番化するのかと思ったが、原作小説が別にあるとのこと。どうやら、『ビーキーパー』を意識して、このタイトルをつけたようだ。

【物語】 シカゴのガルシア・ファミリー建設会社に現場監督として働いているレヴォン・ケイド(ジェイソン・ステイサム)は仲間達に愛され、頼りになる立派なリーダーだった。彼は英海兵隊に22年間奉職し、特殊部隊員として戦地を駆け回っている間に妻を喪っていた。ひとり娘を養育するために退役して、妻の故郷シカゴに戻ってきたのだったが、資産家の義父からは酷く憎まれていた。それは、鬱病を発症した娘を残して海外で軍務に精進していたレヴォンに「娘の自死の責任がある」というものだった。義父はレヴォンが娘メリー(義父にとっての孫)養育に必要な貯金をするため車で寝泊まりして住む家もないことを理由に、娘との面会回数を減らすよう裁判所に訴えを起こしていた。レヴォンは節約生活を徹底し「まともな食事」をとらないことで知られており、現場の仲間達が好意で弁当を余分に持ってくるほどだった。

 ある朝、レヴォンが出勤すると、事務所で社長のジョー・ガルシア(マイケル・ペーニャ)と彼の妻カーラから「娘のジェニーが突然失踪し、週末から家に戻っていない」と告げられた。ジェニーは親戚たちが楽しみにしていた日曜日のピアノ発表会にも姿を見せなかったことから、何か事件に巻き込まれたのは確実だった。「特殊部隊にいた君なら、娘を見つけ出し、連れ戻せるはずだ。お金はいくらでも払うから、なんとか助けてほしい」とガルシア夫妻に懇願されるレヴォンだったが、「俺はもう、あの頃の俺ではない」と断ってしまうのだが・・・。



 近年のジェイソン・ステイサム出演作では『キャッシュトラック』(2021年)がダントツに面白い。『キャッシュトラック』が傑作すぎて、もう、これを超えることはできないのではないかと危惧していたところ、次の『ビーキーパー』(2024年)は違うテイストながら、『キャッシュトラック』に迫るほどの面白さだった。肉弾戦、銃撃戦の質と量では『キャッシュトラック』を明らかに凌駕しており、どちらの作品をより高く評価するかは観る者の好みによるだろう。私は寡黙なジェイソン・ステイサムのハードボイルドな『キャッシュトラック』が最高だと思う。

◆過去日記
映画『キャッシュトラック』
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映画『キャッシュトラック』再び
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映画『ビーキーパー』
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 『キャッシュトラック』『ビーキーパー』という二つの傑作を観た後では、『ワーキングマン』がいささか凡庸に映ってしまうのは否めない。少々期待外れだったため、帰宅後、口直しに『キャッシュトラック』をサブスクで観たが、やはり、抜群に面白かった。原作未読で、『ワーキングマン』の主人公レヴォン・ケイドのキャラについては映画から判断する以外にないが、単に、ジェイソン・ステイサムの激しいアクションを求めるならば立派に及第点だろう。しかし、主人公の怒りや戦いぶりに意味を見出し、共感したいと思うならば、本作は今一つ、中途半端に感じてしまう。

 この先、本作の内容に触れるので未見の方はご注意願いたい。











 本作には、レヴォンの英海兵隊特殊部隊時代のことが全く描かれていないので、妻の自死や、アメリカ海兵隊のガニーとの絆など「レヴォンとの関係」はかなり漠然としている。同様に、失踪した娘ジェニーを助けてほしいと社長に懇願されながら、「俺はあの頃の自分ではない」と断る理由も判然としない。考えられるのは、特殊部隊時代によほど苛烈で残虐な行為に手を染めていて、当時の「暴力的な自分」には戻りたくないのか、それとも、娘メリーとの生活のために「義父に弱みを握られるような暴力行為(非合法活動)に加担したくない」のか、どちらかだろう。シカゴで新しい生活をはじめられたのは、ガルシア・ファミリー建設会社の社長に拾ってもらったからであるにも関わらず、一旦は恩人からのジェニー捜索依頼を断っているのが、とても引っかかる。恩人であるガルシア社長夫妻の依頼であれば、一も二もなく、引き受けるはずだろう。この点、本作はシュワルツェネッガーが拉致された娘を奪還しようと奔走する『コマンドー』(1985年)ほどの緊迫感の足元にも及ばない。実の娘メリーが失踪したならば、レヴォンは決して逡巡しなかったはずだ。

 一度はジェニー捜索を断ったレヴォンが、米海兵隊の旧友ガニーの家を訪ねると、盲目のガニーは彼の様子から「レヴォンが特殊部隊時代のスキルを発揮して、ジェニー奪還に邁進する許可を求めに来た」と察する。これは、私には「謎」でしかなかった。レヴォンが特殊部隊で培ったスキルを封印したことが、ガニーの失明と密接に関係しているのなら別だが、二人の関係を描いていないのだから、ここも引っかかってしまう。

 そして、一番気になったのは、レヴォンの捜索活動内容だ。若くて美しい女子大生ジェニーが拉致されたのならば、凌辱された上で殺害されるか、海外の売春組織に高額で売られるか二つにひとつ。本来、時間的余裕はないはずだ。この点、リーアム・ニーソンの『96時間』(2008年)は実に明快だった。「海外旅行先で人身売買組織に誘拐された女性は96時間以内に売られ、それ以降の追跡救出は不可能」なのだ。旅先のパリで誘拐された女子高生の娘キムを奪還するため、元CIA工作員のブライアン・ミルズ(リーアム・ニーソン)は諜報員時代の伝手とスキルを全開にして、爆走を開始する。時間的猶予がないのだから当然だろう。『96時間』の緊迫感、怒りに燃え、立ち塞がる者全てを殺害して、娘の行方を追う父ブライアンの姿には強烈な共感を覚えた。ところが、本作のレヴォンはどうだ? 失踪したジェニーの痕跡を追って、猟犬のごとく捜索を開始したのは良い。かつての優秀な特殊部隊員らしく、わずかな痕跡も見逃さず、ロシアンマフィアにたどり着くのはさすがだ。抵抗する者を一瞬の躊躇もなく殺害するのも見事。しかし、どこか、冷めているのは気になる。やはり、実の娘が誘拐されたのと、恩人の娘では状況が違うのかと感じてしまう。アクションの激しさより、救出に残された時間との戦いを描いてしかるべきで、疾走感が致命的に不足している。

 ロシアンマフィア幹部のドラ息子が麻薬密売の傍ら、人身売買の副業をしているとの情報を掴んでからの停滞感は如何ともしがたい。かつての戦友なのか、シカゴ市警の刑事からロシアンマフィアに繋がるバイカー・ギャングの溜まり場を聞き出し、麻薬(クリスタル)取引で信用を得て、ロシアンマフィアのドラ息子に接近するなど、そんな悠長なことをやっている間に誘拐されたジェニーが凌辱されたり、殺害されたり、海外の売春組織に売り飛ばされるかも知れないということをレヴォンが一切考慮しないのは不可解過ぎる。ここは、『96時間』のブライアンのように一気に突き進むところだ。レヴォンの「ジェニー捜索と奪還」に時間的制約が全くないことが、緊迫感、切実感を大きく損なっているのは間違いない。シルベスター・スタローン御大が共同脚本で本作に参加したことが裏目に出た格好だ。

 誘拐されたジェニーが幼い頃から空手教室に通っていたこと、祖父の影響で精神的な強さを身につけていたことはとても大きな要素だった。チャンスを見逃さず反撃したり、逃走を図ったりする勇気と行動力が彼女にあったからこそ、レヴォンの救出が間に合ったのであって、彼女の行動無しには奪還は不可能だった。逆に言えば、レヴォンの捜索活動は失敗だったといえる。レヴォンが悠長にかまえ、潜入捜査まがいの行動で無駄に時間をかけていたことが最後まで引っかかる。『96時間』がいかにリアリティに富み、素晴らしい緊迫感疾走感を実現していたか再認識してしまった。

 些末なことだが、タイトルを『ワーキングマン』とするなら、もう少し現場監督らしい戦いぶりを見せてほしかった。その点、ホームセンターの店員であるデンゼル・ワシントンが店の商品である工具や器具で敵を斃す『イコライザー』(2014年)はとても説得力があり、見事だった。また、レヴォンは英海兵隊特殊部隊出身なのだから、何かひとつ、英国の特殊部隊らしい戦術を披露してもよかったのではないか。ブルートゥースを活用したトリック射撃程度では納得できない。

 最後にもうひとつ。ジェニーを奪還した後、相棒のM14を現場に残し、「来世で会おう」と別れを告げるのは少々感傷的に過ぎると感じた。どこかにまだ敵が残っているかも知れないのだから、安全な場所にジェニーを連れて行くまで武器は手放さず、警戒を怠らないのが本当のプロだと思う。色々な点で残念な映画だった。


◆過去日記
映画『96時間』
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映画『96時間リベンジ』
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映画『96時間レクイエム』
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映画『イコライザー THE FINAL』
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