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2026年10月13日08:08

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映画「ディスクロージャー・デイ」

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下半期で最も過酷な現場が終わった翌日、映像仲間と合流して映画『ディスクロージャー・デイ』(2026年、原題:Disclosure Day)を観た。私の周囲では賛否両論、どちらかといえば否定的な厳しい意見の方が多いのだが、期待値を大幅に下げての鑑賞となった。正直なところ、トム・クルーズ最新作『ディガー』とどちらにするか、一瞬、迷った。しかし、トムの熱演する予告編を観るたびに「こりゃ、ダメかも」という思いが強くなり、結局、アレハンドロ・イニャリトウではなく、スティーブン・スピルバーグを選んだという次第。

 本作が、「映画『未知との遭遇』の続編にあたる」とか「『未知との遭遇』とは別の、人類と宇宙人の新たな交流の物語である」という噂も気になっていた。今では自他ともに認める『スターウォーズ』ファンの私だが、実は、公開当時『スターウォーズ』(1977年)より『未知との遭遇』(1977年、原題:Close Encounters of the Third Kind)の方にずっと大きな衝撃を受けた。壮大なスペースオペラで心躍る大冒険活劇には胸躍ったが、「宇宙には地球人以外の知的生命体が存在し、彼らは人類とのコミュニケーションを希望している」という『未知との遭遇』のアプローチに深く深く感動した。噂通り、本作が『未知との遭遇』の続編にあたるのなら、「あの物語のつづき」を見届けたいし、「新たな交流の物語」であるのなら、スピルバーグがどんな作品に仕上げたのか、世の中の評判は別にして、観ておかねばならないとも思った。
 

【物語】 プロレスの試合が行われている会場。リング上ではふたりのレスラーが激しく戦い、一方のレスラーがパイプ椅子を振り上げ、もう片方のレスラーの頭に叩きつける。客席を埋め尽くす観客が熱狂し、立ち上がって声援を送る中、男はリュックサックを右肩にかけたまま、静かにリングを見守っている。彼の名前はダニエル・ケルナー(ジョッシュ・オコナー)。試合の展開にはまるで興味がないのは明らかだった。ダニアルの後ろにも席に座ったままの男がおり、男はダニエルに静かに言った。「次に観客が立ち上がったら、リュックサックを渡すんだ」 試合に興奮した観客達が次に立ち上がると、ダニエルはリュックを後ろの男に渡すが、男が受け取ろうとした瞬間、リュックを押さえ、「これで無事にジェーンを返してくれるんだな??」 その時、ダニエルの左隣に座っていた女性がダニエルの脇腹にハンドガンを押し付けた。「おとなしく、リュックを渡しなさい」 指示に従って、リュックを渡したダニエルは怪しい男女の指示に従って、会場を出ると、搬入口の駐車場に連れて行かれる。

 そこで待っていたのは、合衆国政府に業務を委託されている大手民間企業ウォーデックス社のCEO、ノア・スキャンロン(コリン・ファース)だった。ダニエルはウォーデックス社でサイバーセキュリティ対策部門で働く優秀な技術者だったが、秘密裏に会社から極秘データと最重要アイテムのひとつを盗み出し、どこかへ届けようとしていた。スキャンロンは「データを盗み出すことを指示したのは誰だ? 関係した人物全員の名前を明かせば、恋人は返してやろう」 そう言うと、両手を拘束されたままのジェーン(イヴ・ヒューソン)を部下に連れて来させた。ジェーンの両手の拘束バンドが切られたあと、ダニエルはリュックから謎の金属棒をつかむと「動くな!」とスキャンロン達に警告する。部下達が銃口を向けるのをスキャンロンはあわてて制止し、ダニエルに「その使い方を知らないだろう? おとなしく返すんだ」と静かに語りかける。部下達が銃口を向けたまま、ダニエルとジェーンに近づくのをスキャンロンは「やめろ! ディバスで何が起きるかわからないんだ」と叫んだ。ダニエルは「ディバイス」と呼ばれた謎の金属をノア達に突き出しながら、ジェーンと二人で車に乗り込み、逃走を開始した。ダニエルは車を飛ばしながら、スマホで電話をかける。「ヒューゴ! ディバイスとデータは持ち出した。ここから先はどうすれば良い! どこで受け渡せる??」 電話の相手はヒューゴ・ウェイクフィールド。ウォーデックス社の生物資産局長の要職にあり、スキャンロンに信頼されていたが、ダニエル同様、ウォーデックス社の陰謀に気づき、他の仲間達と正義のために立ち上がったグループのリーダーだった。「ここから先は君自身がそれを届けてほしい。まずは身を隠せる場所を探すんだ。スマホはすぐに破壊しろ」 ダニエルはヒューゴの指示に従い、スマホを二つに折ると、窓の外に放り投げた。

 カンザスシティの地方TV局KCXEに勤めるマーガレット・フェアチャイルド(エミリー・ブラント)は天気予報コーナー担当で人気を集めていたが、実のところ、彼女はジャーナリスト志望で情報番組のアンカーになることを夢見ていた。彼女の予報は時々大ハズレするが、魅力的な容姿と個性的なトークにダンスで視聴者に愛されている。同棲中の恋人ジャクソンに「この部屋はなんだか気に入らない。また、引っ越ししましょう」と提案するが、彼は「また引っ越し? ここへは来たばかりだよ」と気乗りがしない。その時、開いている部屋の窓に珍しい赤い小鳥(紅冠鳥)がやって来て、キッチンのテーブルに飛び移った。「まぁ、なんて可愛いのかしら」 マーガレットは微笑みながら、小鳥の様子を眺めていた。すると、突然、彼女は流暢な外国語を話しはじめ、ジャクソンはびっくり。「ロシア語か、ポーランド語が話せたんだね!!」 赤い小鳥が外へ飛び去ると、マーガレットはわれに返り、「何を言っているの? ロシア語なんて話せないわよ」とさっさと身支度を整え、出勤して行く。カーラジオのボリュームを上げ、歌いながらご機嫌でスポーツカーを飛ばして職場のKCXEに向かっていると、サイレンを鳴らしながらパトカーが追跡して来た。あわてて路肩に停車し、「ごめんなさい、歌を歌っていて気がつかなかったの。どうしても時間までにある場所に行かないといけなくて」と警官に事情を説明するマーガレット。警官は車検証と免許証をチェックしながら、「あなたが誰かはわかっています」と見逃す気がない素振り。困惑し、警官を見つめるマーガレットは突然、彼に向かって、家庭で奥さんともめていること、どうすれば彼女のご機嫌をとって和解できるかをアドバイスしはじめた。警官は誰も知らないはずの夫婦間の会話についてマーガレットが熟知し、妻の名前や好みまで言い当てたことに驚愕し、言葉を失う。「彼女に直接謝ってはだめよ」と言いながら、マーガレットは警官の手から車検証と免許証をとり、エンジンをかける。警官は路上に呆然と立ち尽くし、走り去るマーガレットの車を見送っていた。

 ダニエルはジェーンの案内で、聖クレア修道院に逃げ込んだ。ジェーンはもと見習い修道女として、マウラ院長(エリザベス・マーベル)の下で修行していたのだった。マウラ院長は彼らから何も聞かず、修道院にかくまうことを決めた。ただし、ダニエルには「あなたが何をしているのか、しようとしているのかは問いません。それはあなたの自由です。ただし、ジェーンは違います。彼女を危険なことに巻き込むことだけはやめてください。ジェーンはここへ残して行くのです」と二人に一夜の部屋を与えた。ダニエルは「君は修道女だったのか! 君がぼくに語った過去は全て嘘だったんだな!」とジェーンを責めるが、ジェーンは「あなたとSEXしたでしょ? 私は見習いだったし、神を信じる意味を見失ったから、修道院を逃げ出したのよ」と修道女ではない、一般人だと言い返した。ジェーンはダニエルこそ、自分に何も言わなかったことを責め、「あなたが今、やろうとしていることを教えて!」と詰め寄るが、ダニエルは拒否した。「言っても、君は信じない。話すべき時が来たら、話すから、それまで待ってほしい」 夜明け前、ノアの指示でグループメンバーのサンチャゴが修道院前に車で迎えに来た。急いで助手席に乗り込んだダニエルに続き、ジェーンも後部座席に飛び込んで来た。「何をしている! 君は修道院に残るんだ!」ダニエルはジェーンを車から降ろそうとするが、ジェーンは聞かない。「ひとりでは行かせられないわ、さあ、早く車を出して!」 サンチャゴは彼女の勢いに押され、車を急発進させた。

 本番3分前にKCXEに飛び込んで来たマーガレットはディレクターに「警察に足止めされて!」と言い訳しながらメイク室に急ぐが、「もう、時間がない」とディレクターに急かされ、スタジオに移動する。そこでは韓国大使館員がスタッフと揉めている。彼の語った内容と通訳がスタッフに伝えた内容に誤解があり、精確な報道からかけ離れてしまうからだ。そこを通り過ぎたマーガレットは突然、流暢な韓国語で大使館員と会話しはじめ、彼が何を怒っているのかを理解すると、それを通訳に教えた。大使館員とスタッフはようやくお互いに勘違いがあったことに気づき、丸くおさまった。「マーガレット! あなた、韓国語が話せたのね!」と周囲のスタッフが感心する中、「何のこと? 私は韓国語なんて話せないわよ」と天気予報モニターの前に立った。彼女はいつの間にか、人の心が読めるだけでなく、無意識に外国語を話せる能力が覚醒していた。「次、天気予報! マーガレット、短く切り上げて、アンカーに回せ。デフコンがレベル2に上がって、核戦争勃発の恐れがある。緊急速報を流す」とディレクターに指示される。TVカメラ前に立ったマーガレットはキューを受け、天気予報を話しだそうとして、突然、喉が詰まったような苦しそうな声を出しはじめた。マーガレット自身、自分に何が起きたのかわからず、困惑する。スタジオ中が戸惑い、マーガレットの変調を見守る間、彼女が出す異常な音声が生放送され、ディレクターが「カメラ、切換えろ!」と指示した途端、マーガレットはフロアに倒れ込んでしまう。彼女の放送を観たウォーデックス社の指令室では大混乱が生じていた。彼女が発した音声は宇宙人の言語であり、スキャンロンは「彼女が”体験者”なのは間違いない。すぐに拘束しろ!」と命じる。

 救急病院の病室。ベッドで横になっているマーガレットのそばに恋人のジャクソンがいる。精密検査の結果、マーガレットには何も異常がないことがわかって安心している。担当看護婦が入って来て、「FBIの捜査官達があなたにお話を聞きたいと待機しています」とふたりに告げた。ガラス窓越しに黒づくめのスーツ、サングラスの男達の姿を確認したマーガレットは「FBIじゃないわ。彼らはダニエル・ケルナーを探し出して殺そうとしている」とジャクソンに耳打ちする。「ダニエル・ケルナーって、誰?」いぶかしげな表情を浮かべるジャクソンに「知らないわ。でも、ここから逃げるのよ。私をトイレに連れて行く、と彼らに言って、ここから連れ出して」 ジャクソンに指示すると、カーテンを閉め、そっと病室を逃げ出したマーガレット。ジャクソンの車の助手席に乗って、しばらくするとマーガレットのスマホに電話がかかって来た。ヒューゴだった。彼もまたTV放送でマーガレットの音声を観て、彼女がウォーデックス社に追われることを察し、救いの手を伸べて来たのだ。「私はあなたの味方です。ダニエル・ケルナーを探してください。スマホはすぐに壊して棄ててください」とヒューゴ。見知らぬ男からの指示だったが、「ダニエル・ケルナー」という名前でピンと来た。「どこへ向かえば良いの?」とマーガレットが尋ねると、「それは自然にわかります」と言って、ヒューゴは電話を切った。車のタイヤでスマホを潰して蹴り飛ばしたあと、「ダニエル・ケルナーを探すわ」とジャクソンにマーガレットは告げる。「ダニエル! また、ダニエル! 昔の男なのか?」 不快感を隠さないジャクソンに「私も知らない相手よ」 ジャクソンは不承不承、「どちらに向かえば良い?」とマーガレットに確認する。一瞬の沈黙が流れ、マーガレットは「南へ!」と指示した。こうして、ダニエルとジェーン、マーガレットとジャクソン、ウォーデックス社に追われる二組の逃亡劇がはじまるのだったが・・・。




この先、ネタバレです。先入観なしに
劇場鑑賞されたい方はご注意ください。















 正直なところ、こういう物語だということにショックを受けた。少なくとも、『未知との遭遇』の続編でないのは間違いない。続編ではないばかりか、むしろ『未知との遭遇』が描いた地球外生命体と人類の物語より前の段階、もしくは、『未知との遭遇』を別の角度から描き直したものと考える方が正解かも知れない。何故、今さら、「そのレベルのお話を映画にしたのか?」と大いに驚いた。テーマそのものが古く、斬新さはどこにもない。本作の地球外生命体は、人類に友好的でコミュニケーションを求めており、『未知との遭遇』『E.T.』の系譜にある。傘寿(80歳)目前にして、今なお、少年のように純心で美しい宇宙人観を失わないスティーヴン・スピルバーグには感心する。

 物語はあえて、先を読ませない不親切な展開を選んでいるように感じた。脚本は「よほど緻密に構成されたものか、とんでもない失敗作」かのどちらかだろう。登場人物の過去、背景についてはほとんど描かない。国家なみに潤沢な資金、軍か警察レベルの捜査追跡能力をもつウォーデックス社の実態も不明。アメリカが舞台でありながら、合衆国政府も政治家も高官も軍隊も警察も一切登場しない。陰謀の全貌も描かず、地球外生命体から得た異次元の科学技術を何に使おうとしていたのかもわからない。肝心の地球外生命体(宇宙人)が人類に何を求めているのか、ダニエルとマーガレットを通じて「何をしたかったのか」を描かないことなど、もはや潔く感じるほどだ。全て、観客に想像させ、考えさせる「余白の多い物語」である。それが狙いなのか、結果的に説明不足で矛盾に感じる部分が多くなったのかはわからない。緊張は続くが、観ていてイライラするのはダニエル達が盗み出したディバイスの正体や機密データを「何に使おうとしているのか」目的がわからないことと、ダニエルとマーガレットの超能力がいつ、誰によって与えられたものか終盤まで描かれないからだろう。ひとつひとつ謎が解明され、最後のピースがはまってもジグソーパズルのように全体像が浮かび上がる驚きも爽快感もない。このあたり、『未知との遭遇』が序盤からワクワク感に充ち溢れ、観客を終盤まで見事に誘導していたことと決定的に違っている。

 いくら地球外生命体の化身とはいえ、いかにもCGの野生動物シーンは如何ともし難いが、映像的には面白い部分もあった。ただし、そのどれもが小粒で、独創的な映像とはいえず、観客を大きく惹きつけるものでなかったことも事実だ。まるで、オードブルの盛り合わせのようなものでひとつひとつは美味しくても、決して主役にはなりえない。物語と映像が上手くハマっていない消化不良感がつきまとうのは残念だ。

 本作で、私が心を動かされたのは2箇所。ひとつめは、地球外生命体の存在を知ったジェーンが「神は人類を神の姿に似せ、最高の創造物として生み出したのではなかったのですか?」との疑問を修道院のマウラ院長にぶつけた時、「聖書には、地上では(on Earth)と書かれています」と教えられたこと。「では、神は地球外の知的生命体を愛しておられますか?」とさらに質問したジェーンに「宇宙はこれほど広いのです。神が人類だけを造られたとは考えにくいと私は思いますよ」と回答する。敬虔で泰然とした修道院長の言葉だけに「人類以外にも神に創造された知的生命体の存在を聖書は否定していない」ことに感動した。さらに、一度は信仰の道を見失ったジェーンに「あなたは神ではなく、人を信じられなくなったのでしょう」と優しく諭したことも大きい。

 もうひとつは、ウォーデックス社がひた隠しにして来た地球外生命体の存在を全世界に発信した時の全米ネットワークのNBCメインキャスター(コートニー・グレース)の反応だ。彼女は公開された機密データに映る地球外生命体を「宇宙人」とは決して呼ばず、全てを視聴者の判断に委ねることに終始する。彼女の表情の演技の見事さには感心させられた。タイトルにもなっている「情報開示の日(ディスクロージャー・デイ)」がゴールではなく、人類の新たなスタートの日であることを暗示して、物語は終わる。

 大好きなジョン・ウィリアムズのスコアはとても控えめで「ジョン・ウィリアムズらしさ」が希薄だったのは寂しい。ところどころ、『E.T.』や『インディ・ジョーンズ』を感じさせるパートはあったものの、ついに最後まで爆発的に盛り上がることはなかった。彼の作品群の中では凡庸なスコアとして記憶されるだろう。

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※マーガレット(エミリー・ブラント)とダニエル(ジョッシュ・オコナー)。主演のエミリー・ブラントの桁違いの好演で、ダントツの存在感を観せているのが本作の大きな特徴のひとつだ。もし、ダニエルとマーガレットの物語ではなく、マーガレットを物語の核として展開していたら、もっとわかりやすく共感を呼ぶことができたかも知れない。「共感力の大切さ」を説く本作が観客の共感を得られなかったのは見逃せない欠点に違いない。
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