現代人の乳児はチンパンジーやゴリラなどの類人猿の乳児と違い、頭蓋が軟骨状態で首がすわらない未熟な状態で生まれる。直立二足歩行を始めたホミニン(ヒト族)は骨盤の幅を大きくできず、出産時の乳児の脳の大きさを制限されることから妊娠期間が短くなる「生理的早産」が始まったと考えられている(絵)。
◎現生人類の頭蓋によく見られる変形性斜頭
だが、それはどの段階のホミニンで起こったのか、謎だった。東大総合研究博物館の海部陽介教授らによる研究グループは、「未熟な乳児」を産む進化的起源に関する論文を発表した。
現生人類の頭蓋には「変形性斜頭」と呼ばれるゆがみが生じることがある。出産時の乳児の頭蓋が柔らかく、床に寝かされると首がすわらない状態のため頭の重さなどでゆがみやすく、成人になっても変形が一部残ることが少なくない。
研究チームはこの点に着目した。
◎1500個体以上の大型類人猿と現生人類の頭蓋のゆがみを調べ化石人類と比較
まず計1500個体以上の大型類人猿と現生人類の頭蓋のゆがみの程度を統計的に比べ、人類ではゆがみが大きいことを確認した。次に10数万年前のホモ・エレクトス(ジャワ原人)2個体と6万年前頃のホモ・フロレシエンシス1個体で頭蓋のゆがみを計測したところ、人類と似たタイプでかつ大きなゆがみが見られた(写真=横方向への強いゆがみを示す現代人=左=とジャワ原人=右=の頭蓋。どちらも後ろから見たところ)。
ゆがみは骨の保存状態の詳細な分析から、地層の圧力で生じたのではなく、変形性斜頭と考えられ、後期ジャワ原人もホモ・フロレシエンシスも、ホモ・サピエンスと同じように「生理的早産」だったと結論づけた。
この成果は、ホモ・エレクトスが現代人と同様に難産を経験し、それを軽減するため、あるいは未熟な乳児を保護するための血縁集団内の協力行動を発達させていたことを推定させる。
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