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2026年09月30日05:32

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洞窟最奥部で見つかった謎の古人類ホモ・ナレディ20個体は全員女性だった!(下):どんな社会組織だったか

 南ア、ライジング・スター洞窟(写真)で発見されたホモ・ナレディの骨を蛋白質を基に解析すると、20個体すべてが女性と判定できた。
 こんな事態が偶然であり得るのだろうか。

◎男性のY染色体上でアメロゲニン遺伝子が欠失していた可能性も
 仮に性比が1対1と仮定すると、無作為に選んだ20人がすべて女性である確率は0.0000954%、すなわち約100万回に1回ときわめて低い。ではなぜ、ホモ・ナレディでこのようなことが起きたのだろう。
 まず考えられるのは、男性のY染色体上のアメロゲニン遺伝子が欠失していた可能性だ。実際、そのようなことは稀にある。現代のオーストリア人男性の0.18%、パキスタン人男性の8%が男性型アメロゲニンを持っていない。
 また、男性型アメロゲニンは女性型に比べて時間の経過とともに分解されやすいのかもしれない。しかし著者らは、ホモ・ナレディよりさらに古い時代の古代人類で男性型アメロゲニンが検出されていることを根拠に、この可能性は低いと主張している。

◎少数の男性の周りに多数の女性という社会構造
 20個体すべてが実際に女性であるなら、古代人類の未知の行動が関係しているのではないかと推測する研究者もいる。
 ホモ・ナレディは、一雄多雌制をとる今日のマウンテンゴリラのように、少数の男性と多数の女性で集団を形成していたのではないか、とアメリカのセント・マイケルズ・カレッジの生物学者であるポール・コンスタンティーノ博士は考えている。ただし一雄多雌社会であっても、分析した乳児や幼児を含む子ども10個体で男児が1人もいなかったことの説明はつきにくい。
 ホモ・ナレディがライジング・スター洞窟系の奥深くの空間をどのように利用していたかを完全に理解するには、まだ手がかりが不足している。唯一確かなのは、その暗い洞窟が、彼らの死後の住まいになったということだ。

◎何らかの社会的・文化的規制があったか
 ホモ・ナレディは墓を掘って埋葬するようなことはしていなかった、とアメリカ、ジョージ・ワシントン大学の古人類学者であるバーナード・ウッド博士は考えており、女性の遺体を洞窟に運び込み、そのままそこに置いてきたのではないかと推測している。何らかの文化的行動以外に、洞窟系から一方の性別の骨格しか見つからない理由は考えられないと同博士は言う。
 男性の骨格が見つからないことは、これまでホモ・サピエンスでしか知られていなかったレベルの複雑な思考を要する慣習がホモ・ナレディにあったことの証拠だとバーガー博士は考えている。ホモ・ナレディが死後に生物学的性別、ひいては社会的・文化的性別によって分けられていたことの証拠を目の当たりにしているのだ、と同博士は語る。

◎歯を試料にできる有望な研究手法
 今回の研究は、骨やDNAから情報を得られないようなサンプルでも、蛋白質がいかに役立つかを示したものでもある。
 歯の表面をわずかに削るだけの新しいサンプリング手法を古人類学における「画期的な進歩」と先のコンスタンティーノ博士は評価する。ホミニンの化石記録は歯であることが多く、一部の遺跡ではかなりの数が発見されている。この手法で男性と女性の人数が分かれば、古代集団の社会構造や交配の傾向まで示せる可能性があると期待する。

◎アウストラロピテクスの性別判定にも
 またこの手法を用いれば、1974年にエチオピアのハダールで発見されたアウストラロピテクス・アファレンシスの「ルーシー」(下の写真の上)のような有名な化石の性別に関する従来の見解を裏付けたり、「ルーシー」発見の翌年に同じハダール(A.L.333遺跡)で見つかった「最初の家族」13個体(大人と子どもを含む)の社会構造を探ったり、これまでに発見された中で最も完全なアウストラロピテクス・アフリカヌスの頭蓋「ミスター/ミセス・プレス」(下の写真の下)のような化石の性別をめぐる論争に決着をつけたりできるだろう。
 「古代の蛋白質が先史時代の窓を少し広げて、私たちをホミニンの親戚により近づけてくれるのを見るのは素晴らしいことだ」、とドゥカ博士は今後に期待する。
 ホモ・ナレディの男性型アメロゲニンの欠如の問題は、依然としてマドゥペ博士を悩ませている。博士は、分子生物学の未知の領域に何らかの説明が潜んでいるのではないかと考えている。もしそうなら、それは素晴らしい発見になるかもしれない。

◎洞窟内の未発見の骨に期待
 この問題に答えを出せるのは、間違いなく男性と断定できる骨格だけだ。バーガー博士は、この洞窟系にはまだ発見を待つ数十個体の骨が眠っている可能性があると推定している。その中から男性の骨が検出できれば、ホモ・ナレディの新たな行動と社会組織を見いだせるかもしれない(写真)。
 今回の発見には奇妙な偶然がある。現在のライジング・スター洞窟系に入るには狭い隙間を通り抜ける必要があったため、最初に骨を発掘した古人類学者のグループは全員女性だったのだ(写真;16年10月8日付日記:「NHK-Eテレの『地球ドラマチック――洞窟に眠る新種の人類』で触発される謎の多くと宝庫への希望」
https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201610080000/を参照)。
(完)

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202609300000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「氷河期最末期の現ベトナムで矢で撃たれた痕跡の人骨発見、狩猟採集民同士が争った最古の例の可能性」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202509300000/

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