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2026年09月27日05:00

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「白亜紀のクラーケン」、頂点捕食者だった推定全長19メートル巨大タコを発見

 中生代の海は怪物だらけだった。歯が突き出た魚も、硬い殻を噛み砕くサメも、巨大なモササウルスもいた。そしてさらに、深海に生息していた危険な生き物がまた1つ明らかになった。
 8本の腕を持ち、信じられないような大きさに成長し、骨を砕くくちばしで獲物を食べていた「白亜紀のクラーケン」とも言えるナナイモテウティス・ハガーティ(Nanaimoteuthis haggarti)だ(想像図)。2026年4月23日付のアメリカの科学誌「Science」に掲載・報告された。
 なおクラーケンは、近世ノルウェーの伝承に登場する、巨大な海の怪物で船を襲うと恐れられていた(図)。

◎残ったくちばしの化石から全長19メートルと推定
 1億年前から7200万年前に生息していたタコのくちばしの化石を調査し、あごの構造から生物の大きさを推定したところ、ナナイモテウティス・ハガーティの全長の推定値は最大で約19メートルに達した。史上最大の無脊椎動物だった可能性もある。論文によると、サメ、首長竜、モササウルスといった古代の脊椎動物の捕食者たちにとって、この巨大タコは嫌な相手だったようだ。
 論文の最終著者で、北海道大学の古生物学者である伊庭靖弘博士(写真)は、「海洋生態系が『脊椎動物の時代』だったという通説に異を唱える結果」だとしている。ナナイモテウティス・ハガーティは、巨大な体と柔軟な腕、そして強いあごの力によって、古代の海の頂点捕食者として君臨していたと氏は考えている。

◎軟体動物で化石は残らないがただ1つくちばしは残る
 この新たな発見からは、化石がほとんど残っていないあるグループの進化についての知見を得ることができる。
 数億年前に身を守る殻を捨てていた軟体動物には、化石になりやすい部分がほとんどない。しかし、古代のタコにも例外的な部分が1つだけあった。甲殻類の外骨格と同じく、主にキチン質で出来ているオウムのようなくちばしだ。
 現生種では、タコのくちばしのサイズが体の大きさとよく関連しているため、古生物学ではくちばしだけで古代の頭足類の大きさが復元される。
 伊庭博士のチームは、日本とカナダのバンクーバー島の白亜紀後期の地層から見つかった、保存状態のよい15個のくちばしの化石を分析した。詳しいデータを得るため、AIを利用して日本の堆積物サンプルに含まれているタコのくちばしの化石を調べた。「デジタル化石マイニング」とチームが呼ぶ手法によって、岩石の内部の画像を大量に処理したところ、隠れていた化石が見つかった。

◎12個のタコのあご化石を見つけた
 このアプローチのおかげで、従来の技術では難しかったあごの化石まで見つけて、3Dデジタル化石として復元できた、と伊庭博士は述べる。
 この作業により、12個のタコのあごの化石が見つかった。その中には、巨大なくちばしの化石も含まれていた。
 大型の標本のうち2つは、くちばしの化石の形状から、ナナイモテウティスの既知の種であることが分かった(写真)。
 ナナイモテウティスは、かつてコウモリダコの近縁だと考えられていたが、今回の研究で有触毛亜目(ゆうしょくもうあもく)であることも明らかになった。有触毛亜目は深海に棲む頭足動物で、腕の間に膜があり、頭には耳のような特徴的なヒレがついている。

◎最古の記録を1500万年さかのぼらせる
 今回見つかったあごの化石から、こういったタコの仲間が白亜紀後期にかなりの大きさになっていたことが分かる。中でも最大のあごを持っていたのが、8600万年前〜7200万年前に生息していたナナイモテウティス・ハガーティだ。そのくちばしの大きさは、ダイオウイカの1.5倍ほどだった。
 近親種であるナナイモテウティス・ジェレツキィ(Nanaimoteuthis jeletzkyi)も、全長の推定値は最大で約8メートルに達した。
 さらに今回見つかったその化石から、最古のタコの記録が500万年、最古の有触毛亜目の記録が1500万年ほどさかのぼることになった。
 しかし、この驚異的な大きさに疑問を持つ科学者もいる。
 ナナイモテウティス・ハガーティが最大19メートルに達するという結果は、「かなり極端な数字」と、スイス、チューリッヒ大学自然史博物館の古生物学者で、古代の頭足類の大きさについて研究しているクリスチャン・クルッグ博士は述べている。あごしか残っていないのだから、ある程度の不確実性があるのは当然のことかもしれないからだ。

◎8本腕の頂点捕食者
 2つのナナイモテウティスの大きさから、この時代、タコの仲間が海の支配者の一員だった可能性がうかがえる。クルッグ博士は、白亜紀の海の食物連鎖の頂点にいたのはタコだったと考えている。大きさを考えれば、頂点捕食者であったはずだ、とクルッグ博士は推定する。おそらく大型の獲物を仕留めた後、くちばしを使って食べやすい大きさにしていたのだろう。
 今回調査対象となったくちばしの化石には、欠けている、傷がついている、摩耗して鋭かった部分が丸くなっているなど、噛み砕くのに使った痕跡も見られた。1割ほどなくなっていたものもあった。伊庭博士はこれを、硬い殻を日常的に噛み砕いていたことによるものだと考えている。

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202609270000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「現代のジャガイモは原種と野生トマトの交雑から進化した(前編):世界の食を支えるジャガイモの起源」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202509270000/

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