旧石器時代の日本列島に生息していたナウマンゾウ(写真)は、従来考えられていたより約1万年も早く絶滅していたらしい。どうやら原因は、旧石器人類に狩猟されたことよりも気候変動による植物相の変化の影響が大きかった可能性が高かったようだ。ナウマンゾウの化石を新たに精密に年代測定した研究成果が東海大などの研究チームがまとめ、成果が5月26日付けのイギリスの科学誌『Scientific Reports』に掲載された。
◎汚染を除去し保存状態の良い長鎖コラーゲンを抽出
これまでは約2万4000年前頃に絶滅したとする説が有力だった。
しかし従来の、年代測定用に骨からコラーゲンを抽出する「ゼラチン化法」では、化石に混入する微量の新しい炭素を十分に除去できず、実際より新しい年代が算出される可能性が指摘されていた。
研究グループでは、化石骨に含まれるコラーゲンのうち、保存状態が良く分子量の大きい「長鎖コラーゲン」のみを抽出する「限外濾過法」で放射性炭素年代を再測定することにした。これにより、不純物の影響を抑えた高精度な分析が可能となった。
◎新開発の高精細の放射性炭素年代測定法を実施
研究チームは正確な絶滅時期を探るため、愛媛県今治市沖の瀬戸内海で見つかった化石(写真)から、前記のように不純物を取り除き、高精度の放射性炭素年代を測定する新手法で測定した。
さらにこれまでに報告された各地の化石についても、同様の新手法で測定をやり直した結果、絶滅時期は従来より約1万年遡って約3.3万〜3.5万年前と推定された。
日本列島に人類が到達したのは約3.8万〜3.9万年前頃とされているから、人類とナウマンゾウとの共存期間はこれまでの想定より大幅に短い約4000〜6000年程度だったことになる。さらに遺跡の分布データを用いた解析では、人類の活動地域とナウマンゾウの生息域は時間的、空間的に重なっていない傾向が示された。
◎大型獣狩猟に適したナイフ形石器はまだ無く
一方、当時使われていた石器には石刃を加工した鋭い刃を持つナイフ形石器はまだ無く(写真=後期旧石器時代初期の茂呂型ナイフ形石器)、大型哺乳類を仕留めるのに不向きだった。
研究チームは、こうした知見から、ナウマンゾウ絶滅は人類の狩猟活動よりも、氷期の中で繰り返された寒冷期と温暖期による植物相の変化によるものだった可能性が示唆されたとしている。
研究チームの日下宗一郎・東海大准教授(自然人類学)は「今回の研究で、旧石器時代の人類が日本列島で大型哺乳類を狩猟しているイメージは弱まったのではないかと思う」と語った。
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