京都大学の河本宏・医生物学研究所教授、長畑洋佑・特定助教などの研究グループは、血液細胞の7億年に及ぶ進化の過程を解明したと発表した。血液で免疫機能を担うT細胞とB細胞は別の系統で進化していることが分かった(図;写真は医学免疫学研究所のメンバー、前列右から3人目が河本宏教授)。
◎いつ出来て、どのように多様化したか不明だった血液細胞
血液細胞や免疫細胞の性質の理解を深めることにつながり、病気の解明や新たな治療法の開発につながる可能性がある。研究成果は5月25日付のアメリカ科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された。
ヒトの血液には酸素を運ぶ赤血球や病原体を食べるマクロファージ、体を守る白血球など複数種類の細胞が存在する。しかし血液細胞がいつ誕生し、どのように多様化していったのかは詳しく分かっていなかった。
研究グループはヒトを含む様々な動物のDNAやDNAから転写されたRNA、そこから合成される蛋白質といった遺伝子の発現の状態を比較する手法を開発し、血液細胞がどのように枝分かれし進化していったのかを調べた。
◎最初に誕生したのはマクロファージ様細胞
ヒトやマウス、魚、海綿動物など約20種類の動物の血液細胞の遺伝子発現を比較したところ、動物の血液細胞は共通の祖先から進化してきたことが分かった。また地球上に最初に出現した血液細胞はマクロファージ様の細胞だと推測できた。
次に動物の血液細胞を詳細に解析したところ「Fos」という遺伝子に共通項があることも分かった。この遺伝子の起源は7億年前の単細胞生物の祖先まで遡ることができた。
Fosは単細胞生物の細胞をバラバラの状態に維持する性質をもち、7億年前の単細胞生物がFos遺伝子と原始的な血液細胞のプログラムを獲得し、多細胞の動物へ進化すると同時に血液細胞が誕生したと推測できた。
◎マクロファージからT細胞などとB細胞などが分岐進化
その後、動物に感染する寄生虫が誕生すると、それに反応する原始的なマスト細胞が5億〜6億年前にマクロファージから分岐し、やがて免疫機能を担うT細胞(写真)やナチュラルキラー細胞などが生まれていった。
一方、マスト細胞に分岐しなかったマクロファージからはB細胞や樹状細胞が分岐していった。血液で免疫機能を担うT細胞とB細胞は、別の系統で進化してきたのだ。
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