生態系を乱しかねない外来種と言っても、何も海外からばかりとは限らない。「国内外来種」というものもある。
◎2024年にやかばるの森で目撃、糞も
沖縄本島北部のやんばるで2024年にシカが目撃され、話題になったが、目撃されたシカは、宮城県由来のニホンジカであることがこのほど分かった。神戸女学院大学と琉球大学などの研究グループが、国頭村の林に落ちていたシカの糞(写真)などのDNA解析をして明らかになった。
やんばるはユネスコの世界自然遺産に登録されている他、国立公園にも指定されている。ヤンバルクイナやノグチゲラ、リュウキュウヤマガメといった固有種が生息する貴重に常緑広葉樹林が広がる。
その森の最も北にある国頭村で2024年10月21日、オスのシカが目撃され、カメラに収められた。その数日後、県道交差点近くの林で、シカの糞も見つかった。この「事件」は、地元の人々にとって衝撃だった。やんばるの生態系がマングースなどの外来種によって脅かされてきたことから、希少な生き物を守らないといけないという意識が日頃から高いためだ。
◎旧石器時代にはシカがいたが更新世末に絶滅
というのも、現在、沖縄本島には在来のシカが生息していないからだ。旧石器時代には、本土より小形のリュウキュウジカ(写真)がいて(島という狭い環境で小形化する「島嶼化」である)、イノシシと共に旧石器人の狩りの対象となったが、更新世末に絶滅している。おそらく人が関与したのだろう。
問題は、5粒の糞を調べた結果、28種の植物を食べていたことが判明したが、この中にリュウキュウホウライカズラという絶滅危惧種が含まれていたことだ。どのくらいの量を食べているのかは分からないが、環境省のレッドデータブックにも載る希少な植物が食べられていたことに、研究者は危機感を抱いた。
◎DNA解析で金華山島のシカと極めて近いことが判明
では、このシカはどこから、どのようにして沖縄本当に来たのか。
慶良間諸島には17世紀の琉球王朝時代に薩摩から持ち込まれ放たれたケマラジカが定着している(写真)。シカは泳げて海を渡れるが、糞をDNA解析したところ、問題のシカはケラマジカとはDNA配列がかなり異なっていることが分かった。日本の南北で大きく2グループに分かれるニホンジカのうち、エゾシカなどの北日本グループに分類されるものとみられるという(図)。
上掲の系統樹からも、宮城県の牡鹿半島の先にある離島・金華山島のニホンジカ(写真)と極めて近縁であることが分かる。
◎人の手で持ち込まれて
では、どうやって? 遠すぎるから、いくらなんでも金華山島からシカが独力で海を渡ってきたわけはない。
金華山島のシカは1920〜70年代に捕獲され、国内の動物園や公園、神社に移送されていたことが、文献などで明らかになっている。当時は全国的にシカの生息密度が低い地域が多く、今のように農作物の食害が大きくなかったため、各地に持ち込まれた際の影響についてそこまで深刻に考えられていなかったようだ。
これらのシカが数十年にわたって各地で飼育され、そのうちの1頭が人の手で沖縄本島に持ち込まれた後、自力で逃げ出すか人間に放たれるかしたのではないか、と研究グループはみている。
1頭だけとすれば、シカが繁殖する可能性はない。寿命が尽きればいなくなるだろう。しかし心ない人間の行為により、生態系を脅かされる恐れがまたしても浮き彫りになったた事件だった。
注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
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