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2026年05月11日05:10

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僕の読書ノート:時を駆ける青年の両親への愛と恩返し、そしてその父の青年期の親への愛憎を描く東野圭吾の『時生』を読む(上)

 心を洗われる読後感だった。読了しても、冒頭と終わりの部分を何度も読み返した。
 東野圭吾の『時生(トキオ)』(写真)という小説である。実は、この小説を読むのは2回目だ。ずっと前に読んで、なにかしら心に残った。再度の熟読だった。
 以下は、僕の『時生』読書ノートである。やや長いが、どうか僕の感動に付き合っていただきたい。

◎23歳の自堕落ヒモ男の前に現れた不思議な青年トキオ
 序章は不治の伴性遺伝病(架空のグレゴリウス症候群という難病)で死の淵にある1人息子・時生を病室で見守る父親・宮本拓実と母親・麗子の思い出で始まる。拓実は、妻の麗子が「呪われた病」のヘテロ遺伝子を持ち、生まれた子が男の子なら50%の確率で思春期末にグレゴリウス症候群を発症することを知ったうえで結婚したのだ。
 そして主治医からいよいよ時生の最期が近いことを宣告された拓実が、麗子に夜の病院待合室で若い頃の不思議な体験を話し始める。20年前、今は意識も無い死の淵にいる植物状態の時生と拓実は会っていたのだということを。
 その頃、刹那的な暮らしをするどうしようもない23歳のヒモ男だった拓実は、浅草花やしき(写真)で「遠い親戚」という不思議な青年トキオと出会う。拓実は、その直後に頼っていた女性・千鶴に逃げられたことに気がつく。千鶴は、風采の上がらない男の岡部と大阪方面に駆け落ちしたらしい。千鶴と岡部の行方を追うギャングに脅され、2人は千鶴探しに大阪に行く。どうやらトキオは、大阪に多少の土地勘があるらしい。最後に分かるが、拓実はまだ元気だった頃の息子の時生を思い出の地として連れて行ったことがあったのだ。

◎謎の肉筆漫画本を手渡されて
 大阪に向かう途中、トキオに強く勧められた拓実は、しぶしぶ名古屋に立ち寄る。名古屋の郊外の、意識不明で寝たきりになっている自分の産みの母親の須美子の最期の枕辺で会って欲しいと、義理の娘の東條淳子に頼まれていたからだ。拓実は、赤ん坊の頃の自分を貧窮で育てられないからと育ての親に養子に出した母親の須美子を憎んでいた。
 枕辺で意識の無い母親に毒づいたあげく、早々に拓実はその家を後にする。追いかけてきた淳子に、拓実は不可解な肉筆漫画本『空飛ぶ教室』を渡される。意識のあった時の須美子に、拓実に渡してほしいと頼まれていたという。
 様々なドタバタ、追跡、監禁などを経て、拓実は実母・須美子の生家を探しに出る。そこに岡部を連れ出したトキオが潜んでいるのだ。岡部を探してギャングに引き渡せなければ、ようやく居所を突きとめながらもギャングに掠われた千鶴の命が危ない。

◎産みの母の愛した青年漫画家の死
 全く手がかりもないながら、どうやら名古屋で淳子に渡された『空飛ぶ教室』にヒントがあるらしかった。しかし産みの母親に反感を持つ拓実は、その漫画本を質屋に安値で売り飛ばしてしまう。うすうす事情を知っているらしいトキオは、漫画本からすでにその場所を突きとめていた。拓実も、悪戦苦闘の末、何とかそのぼろ家を突きとめる(写真=イメージとしてはこんな所か)。そこに一人暮らししている老婆は、須美子の母親、拓実の祖母だった。
 そこで初めて、拓実は自分の出生の秘密を知らされる。かつて須美子は、近くに住む身体障害者の貧しい若手漫画家と結ばれ、拓実を身ごもったのだ。その漫画家は、大火に巻き込まれて死んでしまう。救いに駆けつけた須美子も手の施しようがなかった。
 別れ際に、業火の彼方の漫画家から、拓実が質屋に売り飛ばした『空飛ぶ教室』を託される。「君が生き残ると思えば、今この瞬間でも僕は未来を感じることができるから」という別れの言葉とともに。

◎意識の無い母の枕辺で感謝の言葉を囁く
 生き残った須美子は、父親もいない子を1人で育てる決心をするが、生まれてきても貧しくてミルクも買えない。ガリガリに痩せ細った拓実を見て、養子に出さざるをえなかったのだ。祖母から渡された、須美子が未来の拓実に宛てた手紙に、自分を養子に出さざるを得なかった切実に事情を拓実は知る。また焼死した漫画家の実父の名前が柿沢「巧」で、生まれた子の命名、同音「拓実」と名付けた秘密も知る。
 それを知った拓実の心の中に、変化が起こる。大団円でギャングどもを退け、千鶴を救い出し、心から話し合った結果、別れを決めると、彼は拓実と共に名古屋の須美子を再訪する。
 須美子は、意識も無く病臥しているが、彼は生みの母に最後の別れを告げ、生んでくれたことに心からの感謝の言葉をかけた。去る時にはふと母を見やると、意識も無いはずの須美子の目尻が濡れている。心が弾けそうになるのをこらえ、拓実は意識の無い母の目尻をそっと拭ってやるのだった。それが本当の最後の別れとなった。
(この項、続く)

注 容量制限をオーバーしているため、読者の皆様方にまことに申し訳ありませんが、本日記に写真を掲載できません。
 写真をご覧になりたい方は、お手数ですが、https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202605110000/をクリックし、楽天ブログに飛んでいただければ、写真を見ることができます。

昨年の今日の日記:「黒部立山アルペンルートととなみチューリップフェアの旅(6):感動! 黒部ダムの絶景」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202505110000/

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