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2007年04月27日05:04

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コリンズのシベリウス!

 今年(2007年)はシベリウスの没後50年ですが、待望の録音が復活しました。アンソニー・コリンズが指揮した交響曲全集です。モノラル時代に有名だったこの全集は、しかし日本では初期の1番2番ばかりが再発売されるだけで、3番以降の5曲が国内盤で出たのも半世紀ぶりのことだそうです。
 僕は30年ほど前に輸入盤LPでこの全集を買いましたが、世紀の名盤とはこういうもののことをいうのだと改めて痛感しました。シベリウスは大好きな作曲家なので日本で出た全集はほとんど聴いてきたつもりですが、これほど表現が積極的な演奏は他にありません。50年代ならではの速いテンポで率直に押してくる演奏ですが、コリンズのバネの効いたリズム感、楽器の浮沈の鮮やかさ、凝縮された進行の中にくりひろげられる表現のダイナミズム、テンポがゆるまなくても音量がすっと下がるだけで魔法のようにたちのぼる叙情、どれもこれも比類のないものです。
 過渡期の中途半端な作品に思われがちな「3番」に他の人との差が如実に出ています。普通の演奏だと「1番」「2番」のロマン的な表現の濃厚さはすでになく「4番」のような底知れぬ深みにもまだ届かないというどちらから見ても物足りない曲に聞こえがちですが、コリンズの手にかかるとそれまでの曲より切り詰めた手法で同じくらいの壮大さが表出され、しかも中期後期の瞑想性を予告するものを漂わせたすばらしい曲に聞こえるのです。他の人ではマイナスになって出てくるものがコリンズだと全部プラスになっているわけで、表現の積極性ゆえのことでしょうがその差の大きさたるや凄まじいものです。
 もしもシベリウス全集をお持ちでないのでしたら何をおいてもお薦めですが、すでに何かをお持ちでそれを気にいっておられる場合は薦めていいかためらわれます。ひょっとするとショックを受けかねないと思ってしまうからです。シベリウス全集においてこの録音が占めている位置を、たとえばベートーヴェンやブラームス全集において占めているものがあるかといわれてもとっさに何も思いつきません。
 CD時代になってから25年間も待たされたものなので保存用に1セット余分に買ってしまいました。いつまで売ってくれるかどうか心もとないので。

 それにしても、ここでのコリンズとロンドンSOの表現力の凄さは僕が録音で聴けたもののうち間違いなくトップクラスです。できないことなどなにもないように聞こえてしまうのです。もちろんカラヤンとベルリンPOの膨大な録音を全て聴いたわけではありませんが、聴けたものに限ればコリンズとロンドンSOのレベルに達したものには出会えませんでした。他にこのレベルに達したといえそうなのはブルックナーにおけるベイヌムとコンセルトヘボウO、ショスタコーヴィチやプロコフィエフにおけるアンチェルとチェコPO、バルトークやベートーヴェンにおけるライナーとシカゴSO、スッペやオッフェンバック、ボロディンにおけるフランツ・アンドレとベルギー放送SOくらいしか思い当たりません。

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