『小津安二郎周游』�衒檎砂媾�、平成15年、田中眞澄(まさすみ)著。
読みごたえありと感じてしまうのは私の知らない事情が多く書かれている事の裏返しでもあります。
どのページにも唸らされましたが、膝を打ったのが、「画面の全てをコントロールしようとする完璧主義を求める姿は、大衆を前にした演奏会を拒否したピアニストのグレン グールドに近いかもしれない」との部分でした。私が大学生だった頃、FM福岡で暫く流されていたSONYのコマーシャルでグレン グールドが紹介されていました。私は鍵盤と情事をするのだ、と語ったグレン グールドが奏でるピアノ音にゾクゾクする興奮を覚えました。グレン グールドのLPを何枚か買い込み、一時期グレン グールドばかり聴いていた時期がありました。そんなグレン グールドと小津安二郎を並べた田中眞澄さんの視点に大変な興味を覚えました。1955年録音のバッハの「ゴールドベルク変奏曲」(旧盤)が主題部分を21回録り直したと伝えられるが、それは充分に小津的でもあるのだが、
しかし一般大衆を避ける事をしなかった、できなかったのは小津安二郎、というよりも映画で飯を食う人間の宿命である、とのコメントもしっかり事実をフォローしています。1955年 7月の小津安二郎日記に、『早春』のロケハン後に帰宅した小津が複数回に渡って(飯田蝶子から贈られたと言われる)テレビでのプロレス観戦について記していた、と。中学の時には柔道部に所属していた小津は格闘技好きで、ボクシングのみならず、プロレス、大相撲、野球にもたいへんな興味を示していた、と。精神のスタイリスト小津安二郎は、自分では語らなかった「もののあわれ」という日本語を追い続けていた、はず、だと。小津安二郎を巡る「周游」、これからも続けて行きたい、と思いますし、
門前仲町における来月の小津安二郎最終講座の良き予習ともなりました。
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