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2024年05月04日20:43

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「人間の境界」アグニエシュカ ホランド監督

「人間の境界(Zielona granica/Green Border)」日本公開日(5月3日)に大阪ステーションシネマにて。2023年ポーランド、フランス、チェコ、ベルギー、アグニエシュカ ホランド&ガブリエラ ラザルキィェヴィチ シエチコ&マチェジ ピスク脚本、アグニエシュカ ホランド監督、マヤ オスタシェフスカ、ベヒ ジャナティ・アタイ、アガタ クレシャ、ら。
4カ国共同制作と発表されてはいますが、事実上のポーランド映画なのだと思います。映画は、ある地点から飛行機でベラルーシのミンスクへ向かう難民達の様子から描き出されます。ベラルーシからポーランドというEU=ヨーロッパへ渡る事さえ出来れば、安全な生活が待っている!、という"噂"を信じて移動する事が"出来た"人達です。その中でも、ポーランドから親戚のいるスウェーデンへの移住を夢見る一家を中心に映しています。ミンスク空港着陸前に機内のCA達から乗客達に手渡される薔薇の花と「ベラルーシで素敵な滞在を」との掛け声に難民達の表情が緩み明日への希望も垣間見られるのですが、飛行機内のアナウンスというものは何処でもそうであり、ある意味で無責任と残酷さを感じてしまいます。どんな独裁国家にランディングしようとも、着陸直前では「良い滞在を!」なんて言葉を投げるのでしょうが、一旦ランディングした後は「過酷な運命が待っているかもしれませんが、自己責任で何とかして下さいね」などと単なる皮肉に聞こえてしまうのみならず、持ち上げてからドン底に叩き落とそうとしている悪魔の囁きではないのか?と、余計に恐ろしく感じられます。
ベラルーシとポーランドの国境で起こる難民移送問題。地表に転がされている有志鉄線の下を潜り抜けてベラルーシ側からポーランド側へ渡ろうとするシリアを始めとする中東からの難民の老若男女や妊婦達、モロッコ国籍の人もいたり、、文明の利器であるスマホで自分たちがいる位置を確認したり、ポーランド側で支援してくれる、筈の、同胞と連絡を取り合ったり、、飲料水や食物の確保、足の怪我や雨や泥沼やバッテリー切れ等と格闘しながらベラルーシ側とポーランド側の両方の国境警備兵からの扱いに翻弄され続けます。ベラルーシ側ではポーランドやポーランド人を罵り、ポーランド側ではベラルーシやベラルーシ人を罵り続けています。ここまでの鍔迫り合いが起こっているとは、、、
難民問題がなかったとしてもここまで仲が悪いのか、それとも難民問題があるからこそこれ程に仲が悪いのか、、、?
近々に長女を授かる予定のポーランド側国境警備兵の葛藤、危険な仕事とは承知しながらも下された命令を任務として全うし続けるべきなのかどうか、人道的に道義的に難民を助けてあげるべきではないのか、、荷物検査の際にトラック内で段ボールに囲まれて息を潜める難民達の一人と目が合ってしまいますが、見逃す事を決断し、それ実行していました。こんな葛藤を抱えながら組織の中で仕事をしている人って、どの国にも、どんな職業にもいるのだと思います。殆どの人はその葛藤の壁をぶち破る事が出来ず、給料を払ってくれている組織の言いなりに無理矢理自己暗示をかけながら正当化を図るのでしょう。国境に近いポーランド側で難民援助をするボランティア側の人間も意見の相違が吹き出し一枚岩になれず、政府の意向に逆らうような態度と判断されると捕まってしまうというリスクを負いながらの危険な活動かま浮き彫りにされています。ポーランドのデュダ大統領の強行姿勢に対して、そういった国境現場で働く警備兵も汚い愚痴を溢し続け、ボランティア達も身を削り乍らの人道援助に限界を感じる人も相当いるようです。ベラルーシからも敵視され、自国政府側からも厳しい圧力がかかる中、物を言わざるノンポリの一般人のままでいたい人が増えるのも痛い程に理解出来ます。そして何より何処にいても、何処に行こうとも、運命に翻弄され続ける難民の人達が今日も地球のあちこちで泣いている事を忘れてはいけませんね。テレビ等で報道されるだけでも、欧州にも押し寄せる難民問題は私個人には手が付けることの出来ない問題の一つで、心痛めながらも他人事でした。これからもそうなのかもしれませんが。
その後のロシアウクライナ戦争で俄かにウクライナ難民を受け入れ始めた日本に住む人間の一人として、この変わり身はやはり「白人が困っているから」という人種区別から来るものなのか?とも改めて考えさせられます。
難民という存在自体の問題、彼等を誰がいつどうやって移送するのか、管理するのか、彼等の人権に何処まで関心を注ぎ続ける事が出来るのかという問題、頭痛いですね。日本に近隣から馬を渡って難民が押し寄せる可能性は前から示唆されていますし、日本人が将来に難民となる可能性があるのかないのか、頭の片隅に入れておきたいものです。私を含めて先進国に住む多くの人は、まさか自分が難民になるかもしれない、なんて、思ってはいないだろうし、思いたくもないのだと思います。
身近な人に最近言われました、
「戦争が近付いているように思います」と。
聞いて聞かなかった振りをしている自分自身がいます。近代日本の先達の多くも迫り来るそれぞれの時代の前に何を思いどう感じていながら過ごしていたのか、、、? 見ざる聞かざる話さずのまま目の前の生活と銭儲けと僅かばかりの娯楽だけを追っていたのでしょうか?
それとも?
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