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2017年10月17日06:51

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闇を吸うと

 人は「闇」を呼吸したら眠くなるのかもしれません。だから昔の真の闇が支配する夜に、人は眠ることにしたのでしょう。しかし今、人工的な灯りのため、夜の闇はかつての力を失っています。だから人の眠りも浅くなっているのでしょう。

【ただいま読書中】『応天の門(1)』灰原薬 作、新潮社、2014年、580円(税別)
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 最初に在原業平が出てきます。まだ権少将で検非違使を束ねる立場で、ここから伊勢物語の方向に行くのかな、なんてことを思っていたら大違い。次に登場するのが「子供の菅原道真」です。どうもこちらが主人公のようです。
 『陰陽師』(岡野玲子)では菅原道真が怨霊として百鬼夜行をするところから始まって、それはそれで結構な衝撃でしたが、本書で出てくるのは、本(中国直輸入の漢籍)を読みふけりとんでもなく頭がよくて観察力があって人付き合いが悪く口も悪い少年で、これはこれで私には衝撃でした。
 この道真少年が、同じ文書生の紀長谷雄との緣から在原業平と知り合い、そこで「鬼が女性を連続してさらう事件」の謎を解明することになってしまいます。
 菅原道真は欲求不満です。自分と対等に知的な会話ができる相手が周囲におらず、自分の学識を正当に評価もされず、さらに周囲の大人たちがそういった「優秀さではなくて有力者の血縁のみが優遇される社会を是としている」ことにも苛立ちを持っています。しかし道真には「経験」が圧倒的に不足しています。「本に書いてあること」は知っていても、実際にそれを試してみたことはない。そのギャップも道真はきちんと認識しています。単なる頭でっかち(他人より知識があることをもってして全能感を持ってしまう人)ではありません。だからでしょう、在原業平に誘われると事件の現場にのこのこついて行ってしまいます。彼は「自分が有能であること」を現場で立証したいのでしょうか。
 ということで、風変わりな平安時代の探偵漫画の始まり始まり〜。


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