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2015年01月21日07:21

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肉だけ食べる態度

 アメリカでは、鮭の頭やイクラは「生ゴミ」だと聞いて驚いたことがあります。切り身の魚肉だけしか食べないのは、「魚の本当の食べ方」ではない、と言いたくなりましたっけ。ただ、ほとんどの日本人が牛や豚で「肉だけ」食べる態度は、肉食人種からは「脳や内臓などを捨てて肉しか食べないのは、家畜の本当の食べ方ではない」と言われるでしょうから、たぶんお互い様なんでしょうね。

【ただいま読書中】『鮭の歴史』ニコラース・ミンク 著、 大間知知子 訳、 原書房、2014年、2000円(税別)
http://www.amazon.co.jp/gp/product/4562051035/ref=as_li_qf_sp_asin_tl?ie=UTF8&camp=767&creative=3999&creativeASIN=4562051035&link_code=as3&tag=m0kada-22
 2500万年前、漸新世から中新世に変わろうとしてた時代、寒冷化が進み、おそらく餌不足からでしょう、淡水魚が海に進出しました。2000万年前にタイセイヨウサケ属とサケ属が生まれ別々の進化の道をたどり、60万年前に現在の「鮭」が誕生します。鮭は雑食性で、非常に効率的に太陽エネルギーを食べ物に換えることができます。また、育つ環境(食物連鎖のどこに位置するか)によって肉質や脂肪の量が異なります。
 人にとって都合の良いことに、鮭は大量に手に入る食料です。ただシーズンを過ぎたらどうするか、ということで、保存技術も同時に発達しました。その代表は、塩漬けと燻製です。カリフォルニア州サクラメントに住んでいたウィントゥ語を話す部族は「サーモン・フラワー(鮭粉)」を保存食としていました。アイヌの住居は、人が住むためであると同時に鮭の燻製小屋でもありました。スコットランドでは、人間の食用には適さない産卵後の味が落ちた鮭を泥炭で燻製したところ、素晴らしい食品になることがわかりました。北極地方では鮭を地中に埋める保存方法が採用されました。低温の地中で腐敗を遅らせるのですが、味が酸っぱくなるところを見ると発酵もさせているようです(「シュールラックス(=酸っぱい鮭)」と呼ばれたそうです)。大量輸送のために樽で塩漬けにした鮭が作られるようになり、やがて画期的な保存技術、缶詰が登場します。鮭の缶詰は人気でしたが、世界大戦でその人気はさらに高まりました。量が多かったため(1940年代にはアラスカで1億匹の鮭がとれたそうです)、アメリカでは配給の対象にならず自由に買えたからです。そして、流通網の進歩と養殖により消費者は手軽に生鮭を食べることができるようになりました。
 「食べものの歴史」は、「食べ方の歴史」であると同時に「保存技術の歴史」でもあることが、「鮭」の場合にはよくわかります。そして本書の最後で著者はこう述べます。「食べものとしての鮭の未来も、保存する必要がある」と。たしかに、海や川を破壊し、鮭を取り尽くしてはいけませんよね。そのために人がするべきことは、なんでしょう?


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