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日記一覧

  ……どうやったらこんな小説が書けるのだろう。 穏やかな波が胸の隙間に入ってくる。その文章は僕の意識とは無関係に心をゆっくりと攫(さら)っていく。読もうとせずとも聞こえてくるように、物語が目に見えない映像として浮かんでいく。 それがたまら

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「渚(なぎさ)ちゃん、本当におめでとう。心から君達の関係を祝福させて貰います」 俺は胸を詰まらせながら拙い涼馬(りょうま)の祝辞を聴く。 彼が人前で話すことは珍しい。 まして、こんな大勢の前で話す機会など、二度とないかもしれない。「では、こ

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こんばんは! くさなぎです。昨日、簡単なプロットを書いて投稿したのですが、コメントを頂きありがとうございます。やはりプロットでは、きちんと物語の流れを書かなければならない、ということを感じましたので、現時点で書いた内容まで残さず、ここに書こ

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こんばんは、久しぶりに日記をつけるくさなぎです。今日はこれを読んでくださっているあなたにご意見をいただきたくて、書かせて頂きます。新しい長編を書こうとしていると、昔途中まで書いていた長編が残っていたので、簡潔な連続短編にして読んでもらいたい

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「木原(きはら)さん、今日はよろしくお願いしますね」 中瀬(なかせ)さんは1トントラックを運転しながら俺を見ていう。「今日の現場は簡単な方です、ちゃちゃっと終わらせちゃいましょう」「了解です、頑張ります」 俺は彼の顔色を伺いながら頷く。 俺

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 ……変わりたくない。 道を行き交う人の袖が長くなっており、飲み物からも湯気が見られるようになった。 暦は10月を迎え、人の動きは緩やかに、けれど確実に変わっていく。それでも僕は迷うことなく半袖のポロシャツを選び街に出る。 人によってはずぼ

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「お、木原(きはら)君。いいじゃん、できるね」 土口(つちぐち)専務に花挿しを褒められ、俺は顔を綻ばせる。「あ、ありがとうございます」「じゃあ、次はこっちをやって貰おうかな」 彼は笑顔で俺を見ながらいう。「はい、やらせて頂きます」 ……よう

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「え、幕も張れないんですか?」 隣にいる松本(まつもと)さんが俺の顔を見て驚愕する。「すいません、練習はしていたのですが……」「……そうですか。じゃあその辺の掃除でもしておいて下さい」 松本さんの目の温度は下がり、俺の体も合わせるように硬直

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「もういいです、木原(きはら)さん。できることをやって下さい」 一回り年の離れた女性社員に捨て台詞を吐かれ、会場の荷物を撤収する。 ……今日も駄目か。 俺はため息をつく暇もなく一トントラックに荷物を積み込んでいく。もちろん積み方もわからず再

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「柳(やなぎ)さん、本当にありがとうございました」 木原君は何度も頭を下げる。「課題も見つかりましたし、これからの道筋が見えました。本社でも頑張れそうです」「いえいえ、短い期間だったけど、俺も楽しかったよ。今日が最後の夜だね、何が食べたい?

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「刑事さん、どうしたんだ? こんな夜に」 蘇鉄は目の前の女性に声を掛けた。桃子を助けてくれた刑事が一人で自宅に来ている。「お話しておきたいことがありまして、寄らせて貰いました」「そうかい。上がっていくかい?」 刑事は首を振った。「いえ大した

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  ……あの女に復讐してやる。  それは俺が大学病院の庭の仕事を引き受けて二年目のことだった。枝切りバサミで松の形を大雑把に整えていた時だ。後ろから声を掛けられ振り返ると、背の小さい可愛らしい女の子が立っていた。近くの花屋でバイトしていると

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「いないねーピカチュウ」「草むらにいるわけがないだろう。真希(まき)、大丈夫か?」 頭が、と思いつつ俺は彼女の行方を見守る。幼馴染でありながら抜けている彼女に俺の頭の方が悪くなりそうだ。「ゲームなんだから、待ってればいいんだよ。ルアーもお香

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 お世話になっています、草薙創志(くさなぎ そうし)といいます。 私は毎日1つ、10分で読める短編、100個作ることを目標にしておりまして、今、40作品目まで完成しました。 ※ 現在は一日一つの短編を作れていません、すいません(笑) そこで私の

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 お題『41〜50』 タイトル『41〜50の作品総評』 PART5  http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1954409235&owner_id=645211497月6日(水)  お題41『環』 タイトル『ウミガメの還流』 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953914390&owner_id

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「では、下山します。時間が押しているのでなるべく早めに行きましょう」 真夏の太陽を全身に浴びながら、時計を見る。現在の時刻は午前五時。四時間以内に下山できなければ、帰りのバスに間に合わず帰る手段を失ってしまう。「大丈夫です。天候もいいですし

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 プロフェッショナル。 この言葉には専門職という意味があり、一つの分野に秀でた者の総称をさす。アマチュアの対義語でもあるのだが、俺にはまだ二つの境界線がどこにあるのかわからない。 プロと呼べるのは給料を貰えるようになってから? 一人前に仕事

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 ……この手で掴めるものは本当にあるのだろうか。 骨折した右手を眺めながら冬の雪国をのそり、のそりと歩く。地元の風景でありながら、この世界に現実感が伴わないのはきちんと僕が定職についていないからだろうか。 趣味で始めた物書きもSNSの中では

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「その程度の強さで覚悟など持たない方がいい」彼はオレを見て呟く。「このまま、何もできずに朽ちていけばいい」「そんなこと、できるわけがない」オレは彼の電子ブレードを掴みながらいう。「ここまで来たのはアイを助けるためだ。お前がオレなら、できるこ

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「……ミミ、ごめんね、気づかなくて」 私は愛犬のミミに寄り添いながら蹲(うずくま)る。 足を悪くした彼女は散歩ができない反動でおしっこができず、腎臓を悪くしてしまったのだ。 ミミの細かい息遣いを聞きながら彼女の体を擦る。彼女が悶え苦しむ姿を

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 清き一票を。 昔の俺はこの言葉を聞くと、常に疑問を纏っていた。 この世に綺麗な一票などあるのだろうか。汚い一票などないし、まして個人の一票もなければ、集団の一票もない。先生だろうが犯罪者だろうが、一票の重みは変わらないからだ。 一票という

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「ねえ、プロメテウス。私達、ここで死ぬのかな?」「死ニマセンヨ、オ姉チャン。僕が守ルカラ」「守るポイントないから、餓死寸前だから」 私がプロメテウスに突っ込みを入れると、彼は目だけで笑った。「何笑ってんのよ」「イエ、オ構イナク」プロメテウス

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「……もうパパのことなんて、だいっきらいっ」「ああ、そんなこといわないで、ママ」 俺は二人の喧嘩を見て、憂鬱になる。 また始まってしまったのだ、と人事ながらテーブルで食事を待つ。「どうして今日、出張に行くの? 昨日はそんなこと、いってなかっ

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 息が切れないよう胸を張り、息を整える。 喉は渇き、体は芯から冷えていくが、立ち止まるわけにはいかない。 雪を纏った海風を浴びながら、それでも前を目指し残り2kmまで来た。ここまできたら歩くことはできないし、途中危険など絶対にできない。 …

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「あ、お姉ちゃん」 彼女はテレビを見ながらいう。「生ライブ映像だって、ここから近いね」「……そうだな」 俺は彼女のアパートでぼんやりとテレビを見ている。テレビの中で見るカノジョは確かに可愛いくて、一生懸命で誰が見てもこんな子と付き合いたいと

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 ……渚、もういいんじゃないか。 俺は海に潜っている彼女に声を掛ける。 両親の呪縛から解き放たれていいはずなのに、お前は彼らが亡くなったポイントに黙々と潜っていく。 それがたまらなく俺の心を不安にさせる。 ……渚、お前の人生はこんな所で終わ

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 お題『31〜40の短編』 タイトル『31〜40の作品総評』 PART4 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953888074&owner_id=645211496月4日(土)  お題31『水』 タイトル『メゾン一国 〜導かれる屑たち〜』 http://mixi.jp/view_diary.pl?i

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 お世話になっています、草薙創志(くさなぎ そうし)といいます。 私は毎日1つ、10分で読める短編、100個作ることを目標にしておりまして、今、40作品目まで完成しました。 ※ 現在は一日一つの短編を作れていません、すいません(笑)そこで私の

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 ……久しぶりだな、この電車も。 椿は電車に揺られながら桃子と一緒に奈良へ向かっていた。そちらの方が利便がいいからだ。 途中大阪で乗り換えて一時間半程電車に揺らされていると、桃子は一人旅が寂しかったのかいつも以上に口数が多かった。 法隆寺の

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苔に覆われた美しい倒木や石。 森に生きる多種多様な生命の生活。 新しい小さな木々、太古の大きな木々の香り。 途切れることがなく流れ出る川の音。 森に存在する全ての有機物、無機物が一つの音楽を奏でているように脈を打ち、ここにいるんだと自ら

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