「いないねーピカチュウ」「草むらにいるわけがないだろう。真希(まき)、大丈夫か?」 頭が、と思いつつ俺は彼女の行方を見守る。幼馴染でありながら抜けている彼女に俺の頭の方が悪くなりそうだ。「ゲームなんだから、待ってればいいんだよ。ルアーもお香
お世話になっています、草薙創志(くさなぎ そうし)といいます。 私は毎日1つ、10分で読める短編、100個作ることを目標にしておりまして、今、40作品目まで完成しました。 ※ 現在は一日一つの短編を作れていません、すいません(笑) そこで私の
お題『41〜50』 タイトル『41〜50の作品総評』 PART5 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1954409235&owner_id=645211497月6日(水) お題41『環』 タイトル『ウミガメの還流』 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953914390&owner_id
「では、下山します。時間が押しているのでなるべく早めに行きましょう」 真夏の太陽を全身に浴びながら、時計を見る。現在の時刻は午前五時。四時間以内に下山できなければ、帰りのバスに間に合わず帰る手段を失ってしまう。「大丈夫です。天候もいいですし
プロフェッショナル。 この言葉には専門職という意味があり、一つの分野に秀でた者の総称をさす。アマチュアの対義語でもあるのだが、俺にはまだ二つの境界線がどこにあるのかわからない。 プロと呼べるのは給料を貰えるようになってから? 一人前に仕事
……この手で掴めるものは本当にあるのだろうか。 骨折した右手を眺めながら冬の雪国をのそり、のそりと歩く。地元の風景でありながら、この世界に現実感が伴わないのはきちんと僕が定職についていないからだろうか。 趣味で始めた物書きもSNSの中では
「その程度の強さで覚悟など持たない方がいい」彼はオレを見て呟く。「このまま、何もできずに朽ちていけばいい」「そんなこと、できるわけがない」オレは彼の電子ブレードを掴みながらいう。「ここまで来たのはアイを助けるためだ。お前がオレなら、できるこ
「……ミミ、ごめんね、気づかなくて」 私は愛犬のミミに寄り添いながら蹲(うずくま)る。 足を悪くした彼女は散歩ができない反動でおしっこができず、腎臓を悪くしてしまったのだ。 ミミの細かい息遣いを聞きながら彼女の体を擦る。彼女が悶え苦しむ姿を
清き一票を。 昔の俺はこの言葉を聞くと、常に疑問を纏っていた。 この世に綺麗な一票などあるのだろうか。汚い一票などないし、まして個人の一票もなければ、集団の一票もない。先生だろうが犯罪者だろうが、一票の重みは変わらないからだ。 一票という
「ねえ、プロメテウス。私達、ここで死ぬのかな?」「死ニマセンヨ、オ姉チャン。僕が守ルカラ」「守るポイントないから、餓死寸前だから」 私がプロメテウスに突っ込みを入れると、彼は目だけで笑った。「何笑ってんのよ」「イエ、オ構イナク」プロメテウス
「……もうパパのことなんて、だいっきらいっ」「ああ、そんなこといわないで、ママ」 俺は二人の喧嘩を見て、憂鬱になる。 また始まってしまったのだ、と人事ながらテーブルで食事を待つ。「どうして今日、出張に行くの? 昨日はそんなこと、いってなかっ
息が切れないよう胸を張り、息を整える。 喉は渇き、体は芯から冷えていくが、立ち止まるわけにはいかない。 雪を纏った海風を浴びながら、それでも前を目指し残り2kmまで来た。ここまできたら歩くことはできないし、途中危険など絶対にできない。 …
「あ、お姉ちゃん」 彼女はテレビを見ながらいう。「生ライブ映像だって、ここから近いね」「……そうだな」 俺は彼女のアパートでぼんやりとテレビを見ている。テレビの中で見るカノジョは確かに可愛いくて、一生懸命で誰が見てもこんな子と付き合いたいと
……渚、もういいんじゃないか。 俺は海に潜っている彼女に声を掛ける。 両親の呪縛から解き放たれていいはずなのに、お前は彼らが亡くなったポイントに黙々と潜っていく。 それがたまらなく俺の心を不安にさせる。 ……渚、お前の人生はこんな所で終わ
お題『31〜40の短編』 タイトル『31〜40の作品総評』 PART4 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953888074&owner_id=645211496月4日(土) お題31『水』 タイトル『メゾン一国 〜導かれる屑たち〜』 http://mixi.jp/view_diary.pl?i
お世話になっています、草薙創志(くさなぎ そうし)といいます。 私は毎日1つ、10分で読める短編、100個作ることを目標にしておりまして、今、40作品目まで完成しました。 ※ 現在は一日一つの短編を作れていません、すいません(笑)そこで私の
……久しぶりだな、この電車も。 椿は電車に揺られながら桃子と一緒に奈良へ向かっていた。そちらの方が利便がいいからだ。 途中大阪で乗り換えて一時間半程電車に揺らされていると、桃子は一人旅が寂しかったのかいつも以上に口数が多かった。 法隆寺の
苔に覆われた美しい倒木や石。 森に生きる多種多様な生命の生活。 新しい小さな木々、太古の大きな木々の香り。 途切れることがなく流れ出る川の音。 森に存在する全ての有機物、無機物が一つの音楽を奏でているように脈を打ち、ここにいるんだと自ら
第四章 『睡蓮の灯り』 女刑事リリーが、花屋の店主・椿とその店員・桃子と大分の温泉に行く話です。 PART1(1/8) http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953792008&owner_id=64521149 リリーが椿の店に行き、彼を鍋に誘う話です。 PART
23.「こ、これは……」 リリーは目の前の風景を見て思わず息を呑んだ。「綺麗……」 雪が降り積もった真っ白な景色の中、睡蓮の花が淡い光を灯していた。「凄い……。このお風呂を亭主が入らないようにするため鑑賞用に変えたんですね」 温泉の中に
19. 次の日、リリーは頭痛で目が覚めた。どうやら酔っ払ったまま寝ていたらしい。慌てて鏡を見ると目が腫れている。 ……そうだった。 小さく溜息をつき、昨日の夜を思い出す。あれから桃子の自棄酒に付き合い、椿がすぐに潰れたため自分が付き合う
15.「あなたは短絡的な道に逃げただけです。一番楽な方法を選んだだけだ。あなたは戦わず現実から目を背けている」 女は上目遣いで雪花を睨んだ。眉が異常な程上がっており、瞳孔はこれ以上ないくらい開いている。彼女の息遣いがこちらに掛かるくらい
12.「いやあ、美味しかったです。また来ます」「ありがとうございます、こちらこそ、またよろしくお願いします」 ……よかった、今日の客は満足してくれているようだ。 エレベーター前で雪花は食事を終えた宿泊客を出迎えていた。今日の料理の評判
9. 風呂から上がった後、椿と待ち合わせをし夕食のテーブルに向かった。まだ夕食の時間には遠く三人で近くの土産コーナーを物色することにする。「あ、リリーさん見て下さい、熱帯魚が泳いでますよ」 桃子の視線の先にはディズニーで有名になった熱帯
6.「えっ、明日追加ですか?」「ああ、別に問題ないだろう。一つ部屋はあいていたんだから」仙一郎(せんいちろう)は何事もないかのようにいう。「困ります。明日はあなたのお客さんのために万全を尽くしてきたのよ。一人加わるだけで配膳の量だって変
4. 煮立ったスープに人参、椎茸を投げ込んだ。肉団子を丸めてスープに浮かせる。少し時間を置いてから豚肉とねぎを入れ蓋をした。その手際のよさに椿は目を丸くしているようだ。 自分では何も準備できていなかったが、桃子の魔法により鍋を自分で作っ
1. 師走の真っ只中、笹葉由佳里(ささのは ゆかり)はいつものように仕込みをしていた。毎年この時期が来ることはわかっているがそれでも手がしびれる。真っ赤になった手を少しでも早く暖めたい。 店の厨房は空気まで凍結しているのではないかという