mixiユーザー(id:64521149)

日記一覧

 第四章 『睡蓮の灯り』  女刑事リリーが、花屋の店主・椿とその店員・桃子と大分の温泉に行く話です。  PART1(1/8) http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953792008&owner_id=64521149 リリーが椿の店に行き、彼を鍋に誘う話です。   PART

続きを読む

  23.「こ、これは……」 リリーは目の前の風景を見て思わず息を呑んだ。「綺麗……」 雪が降り積もった真っ白な景色の中、睡蓮の花が淡い光を灯していた。「凄い……。このお風呂を亭主が入らないようにするため鑑賞用に変えたんですね」 温泉の中に

続きを読む

  19. 次の日、リリーは頭痛で目が覚めた。どうやら酔っ払ったまま寝ていたらしい。慌てて鏡を見ると目が腫れている。 ……そうだった。 小さく溜息をつき、昨日の夜を思い出す。あれから桃子の自棄酒に付き合い、椿がすぐに潰れたため自分が付き合う

続きを読む

  15.「あなたは短絡的な道に逃げただけです。一番楽な方法を選んだだけだ。あなたは戦わず現実から目を背けている」 女は上目遣いで雪花を睨んだ。眉が異常な程上がっており、瞳孔はこれ以上ないくらい開いている。彼女の息遣いがこちらに掛かるくらい

続きを読む

   12.「いやあ、美味しかったです。また来ます」「ありがとうございます、こちらこそ、またよろしくお願いします」 ……よかった、今日の客は満足してくれているようだ。 エレベーター前で雪花は食事を終えた宿泊客を出迎えていた。今日の料理の評判

続きを読む

  9. 風呂から上がった後、椿と待ち合わせをし夕食のテーブルに向かった。まだ夕食の時間には遠く三人で近くの土産コーナーを物色することにする。「あ、リリーさん見て下さい、熱帯魚が泳いでますよ」 桃子の視線の先にはディズニーで有名になった熱帯

続きを読む

  6.「えっ、明日追加ですか?」「ああ、別に問題ないだろう。一つ部屋はあいていたんだから」仙一郎(せんいちろう)は何事もないかのようにいう。「困ります。明日はあなたのお客さんのために万全を尽くしてきたのよ。一人加わるだけで配膳の量だって変

続きを読む

  4. 煮立ったスープに人参、椎茸を投げ込んだ。肉団子を丸めてスープに浮かせる。少し時間を置いてから豚肉とねぎを入れ蓋をした。その手際のよさに椿は目を丸くしているようだ。 自分では何も準備できていなかったが、桃子の魔法により鍋を自分で作っ

続きを読む

  1. 師走の真っ只中、笹葉由佳里(ささのは ゆかり)はいつものように仕込みをしていた。毎年この時期が来ることはわかっているがそれでも手がしびれる。真っ赤になった手を少しでも早く暖めたい。 店の厨房は空気まで凍結しているのではないかという

続きを読む

「おっす、久しぶり、ごんちゃん」「おいっす」 俺達は広島駅で久しぶりの握手を交わす。ネットゲームの中では毎日会っているが、リアルで会うのは半年ぶりだ。「クペ、元気そうじゃな」「それしか取り得ないからね」俺は両手の親指を立てていう。「今から大

続きを読む

 書道。 それは墨で字を表現するだけでなく、自分自身を映す鏡だ。 墨で書く字は旅のセーブポイントであり、今まで辿った形跡はリセットできない。俺は今も、自分だけの字を探し迷いながらも前を向き、旅を続けている。 その旅の途中、二つの字に出会い迷

続きを読む

「おじいちゃん、あれが欲しい」「お、綿菓子か」 渚(なぎさ)の視線の先にはふわふわの綿菓子が入っていた。俺は商品を受け取った後、彼女のために小さく千切って渡すと、首を大きく振って断わられた。「やだ、そのまま食べたい」「わがままやなぁ、ほれ」

続きを読む

 花は妖艶な香りを残し、鳥を惑わす。 色をつけ惑わされた鳥は感じたままに飛び、思いを風に乗せて私の元へ届けるだろう。 花鳥風月、四季の移り変わりをあるがまま美しく表現する言葉だ。今の私には存在しないものばかりで、自由に表現できる姉が羨ましく

続きを読む

 ほう ほう ほたる こい あっちのみずは にがいぞ こっちのみずは あまいぞ ほう ほう ほたる こい「えーこちらに見えますのが、蛍の里と呼ばれる名所です。この橋の下にいる蛍はほとんどがゲンジホタルで、なんと蛍の産卵を見ることができるんで

続きを読む

「ふうん、先輩も大概、女たらしですね」 伊予(いよ)ちゃんはカルアミルクを含みながら俺を見ていう。「こうやって女の子とデートしている時に他の女の子の話をするなんて、卑怯だと思いますし幻滅します」「デートじゃないだろう」俺は目の前にあるナッツ

続きを読む

第三章 『楓の終幕』  花屋の店員・桃子が奈良にある室生寺に向かう話です。  PART1(1/7) http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953290954&owner_id=64521149女刑事リリーが桃子と、夏鳥家に行く話です。  PART2(2/7) http://mixi.jp/view

続きを読む

  14.    翌日。 桃子は銀介に朝食まで御馳走になり二人で五重塔に向かった。昨日は暗闇で全体像が掴めなかったが写真で想像していたイメージより断然小さかった。「こういった古い塔は急に思い立っても作れないんです。木材は山で切ってもすぐに使

続きを読む

  12. 職員の薦めで寺を出た後、近くの民家に入った。簡素な佇まいだが柱は上等なものを使っている。何でも室生寺で働くことになってからずっとここに住んでいるらしい。 職員は朽葉銀介(くちは ぎんすけ)と名乗った。寺の一番奥でお守りの札を書い

続きを読む

  9.  京都についた桃子は早速、初日の目標である海住山寺に向かった。ここで楓の居場所が掴めたらそのまま探るつもりだ。しかし山の中にある五重塔を見た時には違和感を覚えた。 写真の風景とは全く違ったのだ。職員に話を聞いたが、確かに修復を行な

続きを読む

  7.「それじゃリリーさん行って来ますね」「うん、行ってらっしゃい。気をつけてね」 三人で雑談を交わして一週間後、桃子は予定どおりに京都に向かった。新幹線で行くため最寄の駅まで彼女を送った所だ。 リリーはマフラーを揺らしている桃子に思いを

続きを読む

 ……鳥になりたい。 俺は土手で夕焼けに染まる空を見ながら思った。 ……鳥になって空を飛んで死にたい。 空を飛べれば好きな国へ行って、自由気ままに生きて、いつでも死ぬことができるのだ。人間、生まれてくる方法は一つしかないが、死ぬ方法は無限に

続きを読む

  5. 蘇鉄の家に行ってから一週間後、リリーは再び桃子と晩御飯を食べていた。最近残業がないため、彼女とゆっくり過ごすことができているが、彼女の方は何かせわしなく動いている。「リリーさん、お話があります」桃子は味噌汁を注ぎながらいった。「実

続きを読む

「はじめまして、ひーはーといいます」 俺が頭を下げて挨拶をすると、同志が俺に挨拶を返してくれた。「よろしく、ひーはー」「よろしくっす」「たっぷり飲みましょう」「今日は雨の中、来てくれてありがとうね、ひーはー」 キャプテンが俺の手を握り俺に笑

続きを読む

 ※この話はめぞん一刻をパロディにした作品です。  めぞん一刻のイメージを壊す可能性があるので、それでもいいという方は読んで下さい。  反対に知らない方は内容をよく理解できない可能性があります。予めご了承下さい。    ……はぁ。なんでこん

続きを読む

  17. 食堂の外にある自動販売機でビールの缶を二本だけ買いエレベーターに乗り込んだ。正直にいえば、まだ飲み足りず一人でも飲みたい気分だ。 リリーは写真を自分の部屋に置いた後、彼の部屋に行き尋ねた。「まだ飲めます?」「もちろんですよー、そ

続きを読む

  15.「さ、着いたよ。……だけど、本当にいいの? まだ早いんじゃない」「いいの、自分を信じてくれている人がいるから、止まれないの」 桃子は目の前にある建物の中に入った。建物の中は薄暗くどんよりとした空気を放っている。それでも前に進み目的

続きを読む

  11. 登山を終え、下宿先に戻ってきた二人は食堂で落ち合うことにした。リリーは飲み物を注文しようと手を挙げた時、ラムネの瓶が再び目に入った。 ……今度は注文してみようかな。「春花さんは何を飲みますか? 私はラムネを飲んでみようと思うので

続きを読む

お題『21〜30の短編』 タイトル『21〜30の作品総評』 PART3 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1953107896&owner_id=64521149 21〜30の作品の総評、感想、ポイントによるランキングが載っています。 5月20日(金) お題21『花屋』 タ

続きを読む

お題『11〜20の短編』 タイトル『11〜20の作品総評』PART2 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1952678270&owner_id=64521149 11〜20の作品の総評、感想、ポイントによるランキングが載っています。 4月30日(土) お題11『なやみムヨウ

続きを読む

お題『1〜10の短編』 タイトル『1〜10の作品総評』PART1 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1952347440&owner_id=64521149 1〜10の作品の総評、感想、ポイントによるランキングが載っています。 4月20日(水) お題1『お茶』 タイトル『新

続きを読む