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日記一覧

「射っ!!」 袴を着ている男女が大声で四連拍手を行うと、場が湧きたつ。「小百合《さゆり》、さっすがっ! 次も絶対行けるよー」「いけいけ、小百合! お願い、あんただけでも全国大会に行ってぇ〜」 瞳を濡らしながら願う部員達。私も彼女の名前が呼び

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 竿の先に熱く溶けた硝子を巻きつけていく。丁寧に微調整を加えて回していくと、ほんのりと赤く染まった、小さなガラス玉ができた。  ……よし、いい感じ! ガラスの上塗りを繰り返して息を吹きかけていくと、ガラス玉は膨張を繰り返し、ほんのりと色づき

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「では式を始めます。目を閉じてお祈りを捧げて下さい」 神父の合図を受けて皆、席を立ち手を組んでいく。その姿を遠くからぼんやりと眺めていると、近くにいる男が独り言を呟くようにぼそりといった。「ここで一度さよならだ。また5分後に出会おう」そう、

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「お初にお目にかかります、どうも新入りの死神です。 今日は私のような新参者をわざわざ地獄の冥界までお呼び下さいまして、誠にありがとうございます。では早速ですが、気合を入れて落語をさせて頂きましょうかね。もちろん気なんか持ってないのですがね。

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  俺にとっての日常は、命懸けだ。仕事でも、家庭でも――。「あーもう、浩ちゃん、牛乳切れとるやん! 春樹《はるき》はこれしか飲まんのやけ、買ってきて」「あー、ごめん。牛乳だけでいいと? 夕飯、何も食べてないやろ?」 里美《さとみ》のご機嫌を

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  7.「木原さん、ここお願いします! 急いで下さい」「あ、はい」 吉塚《よしづか》さんの容赦ない言葉が式場内を飛び交う。腕時計を見ると、施行アップ時間がもう、目前にまで迫っている。「田山《たやま》君、延長確保して早く写真の光、つけて! 間

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  6.「んー、惜しい。木原《きはら》さん、ここを修正して貰っていいですか」「了解しました」 作成責任者である桑村《くわむら》さんに指示を受けてもう一度、作成物を眺める。  ……確かに対称にはなってないな。 遠く離れて作成物を眺めると、指摘

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  5.「お疲れ様です。木原さん、ちょっといいですか?」 仕事を終え、タイムカードを切ると、指示者の斉木《さいき》さんが声を掛けてきた。「はい、何でしょう?」「明日なんですけど、いつもより早めに会社に来ることって可能です?」「もちろん大丈夫

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 4.「木原《きはら》さん、今日はよろしくお願いしますね」 中瀬《なかせ》さんは1トントラックを運転しながら俺を見ていう。「今日の現場は簡単な方です、ちゃちゃっと終わらせちゃいましょう」「了解です、頑張ります」 中瀬さんの顔色を伺いながら頷

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「お、木原(きはら)君。いいじゃん、できるね」 土口《つちぐち》専務に花挿しを褒められ、顔が綻んでいく。「あ、ありがとうございます」「じゃあ、次はこっちをやって貰おうかな」「はい、やらせて頂きます!」 ……ようやく俺を見てくれる人が現れた。

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「え? 幕も張れないんですか?」  隣にいる松本《まつもと》さんが俺の顔を見て驚愕する。 「すいません、練習はしていたのですが……」 「……そうですか。じゃあその辺の掃除でもしておいて下さい」  松本さんの目の温度は下がり、俺の体も合わせるよう

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「もういいです、木原《きはら》さん! できることだけやって下さい!」 1回り歳の若い女性社員に捨て台詞を吐かれながら、会場の荷物を撤収していく。 ……今日も駄目だったか。 ため息をつく暇もなく社用の1トントラックに荷物を積み込んでいく。もち

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