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2024年05月12日04:46

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俳優目当てで映画を見ると、良し悪しは阪神タイガースの勝率より低い。でも、好きなものはやむを得ない。クロード・シャブロル監督「権力の陶酔」(2006)。

この映画もスター・チャンネルの“パテ社特集”で見ました。クロード・シャブロルという昔から名前を知っている監督さんですが、映画の出来栄えにムラがある人だと認識しています。だから21世紀のシャブロル作品には手を出したくありませんでした。というか、そもそも「いとこ同志」と「二重の鍵」以外に“いい映画”があるのか?と思ってた。

そんなシャブロルの2006年作品なので、クロード・ソーテの「ギャルソン!」のように飛びつきはしませんでしたが、なにしろ「ラブ・ストーリーズ」2部作でジェシカ・チャステインの母親であり、バーホーベン監督の「エル ELLE」(2016)で衝撃を与えたオバサンであり、最近では「ミセス・ハリス、パリへ行く」(2022)や「私がやりました」(2023)もある“大女優”です。

てなわけで見始めたら、政界に通じていて権力の中枢に顔が利くユモー(フランソワ・ベルレアン)が逮捕されます。そして予審判事としてジャンヌ・シャルマン・キルマン(イザベル・ユペール)が登場し、政界のスキャンダルを本気で暴こうとするのでした。そしたら当然、権力を握って金を貪っている一派から排撃されかける、という展開。

このジャンヌさん、ご主人が象牙の塔の学者さん(ロバン・ルヌーチ)で、その甥が政治家を目指す学校にいたのに止めて彼女たちの家に居候として転がり込んできます。そんな甥っ子の夕食まで心配してやらなければいけない女判事が、一大政界スキャンダルに挑むわけです。そんな日常生活のゆるゆる感の中で、政界からの反撃が迫るドラマなのです。

まず黒幕たちは“昇進”という餌で釣ろうとし、女性の同僚(写真3左)を助手につけていがみ合わせようとしますが、そんな野郎どもが思うほど女性判事たちは甘くない。むしろ結託してスキャンダル追求に拍車をかけます。一方で、逮捕されたユモー氏は簡単に捨てられますが、しかし判事に協力する気は毛頭ない。そんな緊迫した政治権力劇が、夕食にピザの出前を取るなどという緩やかな家庭劇と並行して展開するのでした。

実際にあったスキャンダルを基にしているそうで、モデルにされた女性判事は憤慨した部分もあるらしい。でも僕には、ゆるやかな家庭ドラマの乗りで悪徳政治家たちを糾弾するという手法が、とてもいい感じに思えました。しかしこれが僕個人の“特別な反応”であることは、imdbの点数が6.3しかないことからも明らかです(でもアメリカだけだと6.6)。

実際の判事さんはエヴァ・ジョリーというそうですが、わざわざキルマン(野郎殺し)という姓にしていますから、アメリカでの題名は「Comedy of Power」だし、そういう意味でアメリカのリベラルな映画ファン(褒めてます)に受けたのかも。僕もそれに追随しようとしているわけです。でも「エル ELLE」のように野郎をぶち殺しはしません。

シャブロル作品には「虎は新鮮な肉を好む」(1964)などユルユルのスパイ活劇などがあり、郷愁という味付けでもない限り今ごろ食べたら腹を下すような映画ばかりのような気がします。しかしこの21世紀作品「権力の陶酔」は、そう簡単に見捨ててはいけないと僕は思う。シャブロル監督がイザベル・ユペール小母様と組んだ最後の作品だし。

しかしイザベル・ユペールって、最近も「私がやりました」があったし活躍してますねぇ。テレビを含めて150本以上か。さすがに僕も「夏の日のフォスティーヌ」までは手が回りませんが(サントラ盤を売ってたのにね)、リグビーさんと結婚して娘ができたらエリナーと名付けるなど、僕にとって“一生物”の映画にいくつか出ているオバサンです。

1953年3月生まれだから71歳か。“三月生まれ”って、三月の天気のように気まぐれという意味らしいけど(byピエトランジェリ監督の映画より)、今後ますます色々な役どころで楽しませてほしいと思います。韓国映画だけじゃなくて日本映画にも出てよ。って、このオバサマを呼ぼうとする製作委員会なんかないか。蹴飛ばされそうだし…。
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