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2024年04月29日01:37

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今頃になってこんな旧作を褒めることになるとは、僕自身全く想像もしませんでした。庵野秀明監督が“新人”と記された実写映画「ラブ&ポップ」(1998)。

とりあえずWOWOWで放送していたので録画しました。今月末で視聴を解約するので、タイムリーな放送でした。もともと庵野秀明という名前には、島本和彦原作のテレビドラマなどで注目していましたが、僕が全く気にしていない「仮面ライダー」や「ウルトラマン」に手を出すはずもなく、しかし実写初監督作ということで録画したわけです。

エンドクレジットに“監督 庵野秀明(新人)”とあったのには笑ってしまいました。←僕は録画した番組を、必ず本編だけにして(前後の番組CMなどを削除して)HDDに保存しておくから、ラストのクレジットがまず目に入ることが多い訳です。26年前の作品ですから、その程度のネタバレに喜ぶのも変ですね。

また原作が村上龍と知り、あまりいい気分ではありませんでした。彼が芥川賞を取った小説が好きではないもので。とはいえ、全編ビデオ撮影による4:3の窮屈な映像も、カメラ・ポジションが奇抜なもので、冒頭から40分程度は楽しく見ました。とはいえ、伝言ダイヤルの野郎どもが登場するあたりからはダレる。

まずはビデオ映像かよ、と30分ルール適用を考えました。でもVHSレベルではなく、そういう意味で見続けられました。鉄道模型にカメラを乗せて移動撮影するとか、カメラの上からセーターを着るシーンなんか、僕には結構ツボです。だからそんな細かな映像が女子高校生らしき人物を点描していく方法論はアリだと感じました。

エンド・クレジットに“パナソニック”という社名があったので、もしかしてパナソニックがPAL方式のテレビ映像による劇場システムを考案したころの作品なのかと思いました。知らんけどね。PAL方式のカラー放送は、走査線625本だからNTSC方式より画質がいいわけです。

ということで、野郎どもが画面に登場するまでは結構興味深く見ました。ちょうどAKB48のテレビ番組を追いかけていたころの気分を思い出したわけです。そこに庵野印のテクニックが加わっていれば、田中要次がラーメン店の親父で出てこなくても、熱海の旅館の若奥様になった島田や、SKEの大場美奈が出てこなくても、僕にはOKなのです。

そしてラストの渋谷川を4人のJKが闊歩するシーンには、もう平伏するしかありませんでした。ここだけビスタサイズになるのですが(その前にもワンカットあったな)、このエンド・クレジットだけ35ミリで撮影したようです。そこに流れる曲が、“あの素晴しい愛をもう一度”(北山修作詞、加藤和彦作曲)なのでした。

僕がレコード会社に入社し、セールスに出た頃にちょうどヒットしていました。あのころはヒット曲というと商店街などでガンガン流れていました(JASRACが使用料を徴収し始めてから消滅したもよう)。つまり僕の会社には、そんな“ヒット曲”が皆無で、セールスの成績が全然伸びなかったわけです。♪くやしくてくやしくて、とてもやりきれない…。

そんなドツボのセールスマンをあざ笑うかのように爽快に流れていた軽快なヒット曲を、この映画に主演している三輪明日美という新人さんが、危ない音程でキワどく歌うわけです。しかも渋谷川を4人のJKが闊歩する映像とともに。この映像と音楽だけで、僕ならその年のベストテンに入れてもいいと思う。タランティーノも絶賛でしょう。

“あの素晴しい愛をもう一度”には、この歌のキワどさが最高に似合っている。そして渋谷川の上を闊歩する4人の姿は、延々と110分かけて描いてきた彼女たちの生活感覚を、ものの見事に体現しているのでした。こんなに素晴らしいMTVは、久しぶりに見ました。もしかしてAKB48が、この映像からインスパイアされて生まれていたとしたら最高だな。

てなわけで、今更ですが庵野秀明という人物に参りました。島本和彦先生の慧眼に感謝。って、僕が見る目を持ってなかっただけの話ですけどね。とはいえ、J−POPとかに夢中になっている諸君、この歌声の危うさを我々日本人の“社会的限界”だと認識して、根本的に音楽を見直しましょうよ。そしたら大瀧詠一さんたちが目指した方向を、我々も追跡できるのではないか、そんな風にジジイは考えておるのです。
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