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2022年07月11日02:20

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人生に苦悩するということは、単純に自分勝手な生き方を肯定することではないと考えます。ヨアキム・トリアー監督「わたしは最悪。」(2021)。

題名が「私は最悪。」ということなので、映画が最悪だったら嫌だなと思っていました。そしたらその不安が的中したわけです。まず始まってすぐ、“この映画にはプロローグとエピローグ、そして12章ある”と説明が出ます。そのとおりプロローグが始まり第1章が展開すると、それで10分ほど経っていました。てことは単純計算で2時間超えるやん。

物語は、学生のころは成績がよく、しかし何になりたいか決められないまま大学に進学し、しだいに人生に焦り始めるという女性ユリア(レナーテ・レインスヴェ)が主人公なのでした。この主人公に対して僕は、まったく共感できなかったのです。福祉が充実した北欧で恵まれた環境にいて、しかし人生に焦るという部分に、皆目説得力がないのです。

全く自分が共感できない人物が主人公の映画も、いろいろ見たように記憶しています。しかし今回は、バカバカしくて話についていく気がしませんでした。自分が何をしたいのか、それが分からないというユリアが、僕には分からない。分かる気にならないし、この映画も分からせようとしません。だからエピローグを含む残り11章が、とことんバカバカしいだけ。

年上のグラフィック・ノベル作家との生活に飛び込む動機も分からなければ、破局の理由も分からない。少なくとも僕は、その主人公の心境を追うという努力を、2〜3章で放棄しました。いつもの“あんさん、別れなはれ”の論法です。こういう無目的な“自分探し”につきあっている暇はないもので。

このトリアー監督の作品では、「テルマ」(2017)を面白く見た記憶があります。僕の嫌いな超常現象ものホラーなのですが、あちらは主人公の気持ちの動きがなかなかのものでした。この「わたしは最悪。」は、ユリアの感情の動きというものを描かない。彼女の結論だけが次々と登場するのですが、僕は相手の男性たち同様“なんでやねん”と不快感を持つだけ。

そんなドラマを2時間7分も見せられたら、僕は卓袱台をひっくり返しますよ。どんな映画か確かめたい方は劇場へどうぞ。しかし経済的な事情と時間がもったいないという方は、imdbのこの映画のページにリンクしている予告編(1分52秒)を見るだけでOKでしょう。imdbのページを開いて原題の「Verdens verste menneske」を入力すればすぐです。

その予告編の冒頭にある、主人公以外の街の人々や車などが静止画で、主人公だけがそんな静止画の街を走り回る場面だけは、なんとか映画的快感がありました。それを求めてさらに2時間を浪費したい方は、ぜひ劇場へどうぞ。ヒューマントラスト有楽町で見て東京テアトルを儲けさせていただければ、株主のはしくれである僕にも少しは利益が還元されるはずですから。

ということで、まさかここまで正直な題名の映画が存在するとは、僕は思っても見ませんでした。そういう意味では“いい映画”なのかもしれません。どうかご自身の目でお確かめください。もちろんその結果がどうなっても、僕は関知しません。←「スパイ大作戦」のミッションと同様だとご理解ください。
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