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2021年04月07日20:56

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「軋む心」

読書日記
「軋む心」
ドナル・ライアン
 作
(白水社EXLIBRIS)

アイルランドの田舎町で起きた殺人と幼児誘拐。街に暮らす21人のモノローグで事件のありさまがしだいに浮かび上がる。

会社経営を引き継いだ御曹司は資金をドバイの不動産に投資して会社を倒産させてしまうが、社会保険料を払っておらず社員などいないことになっていた。多くの失業者が苦闘する中で皆の信頼を集める青年は仕事を立ち上げようとするが、家には財産を散在して使い果たした父親がいて全てを冷笑するのである。
やがて父親は殺され、それとは別に保育園から幼児が誘拐される。

一人ずつ順不同のモノローグにより事件が次第に明らかになる仕掛けで、不景気にあえぐ田舎町の人々の鬱屈した心境が浮かび上がる。犯罪が明らかになってゆく過程はミステリーを読むような面白さがあり、すべて口語体なので読みやすいが、名前だけを記憶して21人もの語り手の人間関係を把握するには努力がいるので、そこがやや難点である。
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