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2021年01月10日20:08

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「法王庁の抜け穴」

読書日記
「法王庁の抜け穴」
アンドレ・ジイド 作
(岩波文庫)

ローマ法王幽閉の噂は真実か?暗躍する秘密結社。動機なき殺人。捨て身のクリスチャン。めくるめく展開する上質のエンターテイメント。

密かに幽閉された法王を救出するため資金の拠出を募る。この極秘に進む詐欺案件を企む連中はほんとうの悪人。そして体良く騙されて動き回る純朴なキリスト教徒たち。かたや動機もなく気まぐれで人を殺してしまう遊民的青年。
この善と悪の対比に加えて、無神論者だったが奇跡体験により熱心な信者となる男。小説家ではあるがその実凡庸な貴族。などなど様々にキャラクターの立ったドラマで、ストーリーはそれほど進行しないが登場人物の面白さで読まされてしまう。

小説家の煩悶も凡人の域を出ないし、反対に意味なき殺人を犯してしまう青年の過剰な自意識も現実の前では簡単に打ち砕かれてしまう。プロの詐欺師たちはさすがにしたたかだが案外陥穽もある。

ジイドは言わずと知れた世界文学作家だが、バルザックのごとく人間観察が鋭くておもしろいエンターテイメントが書ける人。書けない人も多くいるから。
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