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2020年09月10日20:54

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「会いに行って」靜流藤娘紀行

読書日記
「会いに行って」靜流藤娘紀行
笙野頼子 作
(講談社)

笙野頼子が心中、師と仰ぐ藤枝静男を語る熱き思い。私小説の極北である「田紳有楽」を中心に、これがなぜ私小説なのかしだいに明らかになっていく。この論考自体が私小説。

藤枝静男は私にとっては「田紳有楽」と「空気頭」の作家で、その他私小説作品群にはついていけていない。この2作だけで自分的には得体の知れない天才作家である。その藤枝について奇才笙野頼子が語るのだからこれはもう期待せざるをえない。

ところが前半はもっぱら藤枝が師と仰ぐ志賀直哉と、論戦を張った中野重治の話に終始し、藤枝が志賀をかばう様子や「暗夜行路」についての分析にページが費やされる。違うんだ、志賀直哉はべつに興味がないんだ。ましてや中野重治についてもどうでもいいんだ。

後半ようやく「田紳有楽」と笙野本人の作家生活が絡んできて、台風直撃の最中うんうんいいながら筆が進み出すとまことに面白く、これこれこれだよ、この自由自在に炸裂する文章。これが読みたかったんだ。
しかし本当は私にとっては「空気頭」が最重要作品なので、もっと取り上げてほしかったな…。
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