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2020年08月25日05:03

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世界は存在しないか?

 マルクス・ガブリエルは「世界は存在しない」と一見紛らわしいことを言う。この「世界」については、「私たちが考えているような」という注釈が必要だろう。私たちは、無意識の内に「世界は私たちの知覚とは独立に存在する。」と思い込んでいる。私達に見える「世界」は多種多様である。同じものでも、背景や光の当たり具合で全然別様に見えることがある。時には、山道に落ちている縄が蛇に見えたりもする。

 私たちは、そのようようないろいろの見え方の背後に、一つの整合的な「世界」を推論によって透視するのである。私たちの知覚とは無関係に、あらゆるものが秩序正しくそこには格納されている、そういう世界観をいつの間にか私たちは抱いてしまうのである。

 ガブリエルはそんな「世界」は存在しないというのである。そのかわりに、いろんな見え方そのものの方を肯定する。私達に見えるもの、それらはそれぞれの意味の場において実在すると主張する。 ガブリエルの言っていることは大森荘蔵が言っていることと同じような気がする。大森も世界はいろんな見え方そのものの重ね書きであると述べている。あらゆるものがそこに整合的に存在する世界というものも、そういう意味の場において見える一つの見え方に過ぎない。

 私達は知覚を通じてしか世界に接することはできないはずなのに、私達の知覚とは独立したすべてを包括する「世界」、というものにはなにか無理があるということなのではないだろうか。
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