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2020年05月04日21:07

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「シーシュポスの神話」

読書日記
「シーシュポスの神話」
カミュ 著
(新潮文庫)

不条理を前にひるまず、敢然と受け止める若きカミュの論考。

ここで言う不条理とは具体的には死のことだが、それは論考の冒頭ふれられるだけなので、あとはそれを心において読まなければならない。実存主義哲学の面々、キルケゴールの神やヤスパースの超越者など最後の最後に思考自体を停止してしまうありかたを「哲学上の自殺」とよぶ。形而上学が自己放棄に歩み寄ることをしりぞけ、カミュは不屈不撓の反抗をつらぬこうとする。不条理(死)を直視して生きて行く哲学者ならぬ芸術家の方法とはどんなものか。

芸術とは不条理な世界に生きる経験を二度生きること。唯一の出口が死という不可避のものである事実を見据えて、自分の限界と間もない終末とを確信させたまま打ち捨てておくこと。個人の生は本質的には無用なものとの自覚を持ってこそ作品は輝く。

なるほどカミュは哲学者であるより、しごくまっとうで熱血果敢な小説家。現実社会を生きる具体的な人間である。
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