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2020年03月10日01:05

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この映画、独りで見ていたら号泣していただろうなぁ。アダム・リフキン監督「ラスト・ムービースター」(2017)。

先日「チコちゃんに叱られる」で、年を取ると涙もろくなるのは脳のブレーキがきかなくなるからだと教えられたので、今回は5人くらいで一緒に鑑賞したので、意識してブレーキをかけて見ました(笑)。いや、泣ける人はうんと泣いてください。僕は子供のころ泣き虫だったから、泣くのは弱虫だという刷り込みがあるのです。そんな年寄りと張り合わないで泣くのが正解です。

物語は、「トランザム7000」(1977)の一場面を見せ、さっそうたるバート・レイノルズが年老いたヴィック・エドワーズに変わるという酷な手品から始まります。あまりにも年老いたパートに、やはり愕然。監督のアダム・リフキンは脚本も担当しており、バート・レイノルズが引き受けてくれなかった映画化しなかったそうな。しかしまぁ、よく引き受けましたねぇ。映画祭会場でビールの銘柄らしきサインボードに“スモーキー”とあるのは「トランザム7000」へのオマージュでしょうね。

ヴィック・エドワーズ(バート・レイノルズ)がよく会っている元仕事仲間が、なんとチェビー・チェイスでした(まったく分からんかった! 写真2)。名前を聞いても分からない人はググってね。映画の中で“トニー・カーティス”と名前が出てきて、“それ、誰?”というジョークがありましたが、そこまでググる必要がある人は僕の友達にいないよね。←釘を刺したつもり。

ヴィックの昔の映画ということでもう1本、「脱出」が取り上げられているところも僕好みでした。ジョン・ブアマンの「脱出」は、もっと評価されてもいいと思う。ナッシュビルでヴィックを迎えて演奏する曲がカントリーでいう“ブレイクダウン”曲で、「脱出」の“デュエリング・バンジョーズ”を思い出させるところもいい。

運転手役を兄から押し付けられたリル(アリエル・ウィンター)が、恋人のビヨルンに裏切られることをヴィックが予測し、“指4本揃えて喉を突け”とアドバイスします。それをビヨルンではなく、別の人間にやるところがいい。ビヨルンにやるんじゃ、まんますぎる。そんな細かい部分に配慮した、よくできた映画なんです。

だから、ヴィックが最初の妻クローディア(キャスリーン・ノーラン)に詫びを入れるところで、アルツハイマーのクローディアがヴィックと抱き合い、めでたしめでたしと思わせながら、“あなたとお会いしたことありましたっけ?”と言わせ、さらに決定的な出会いの場面を再演させるところもいい。その後ヴィックはLAに単身戻るわけで、二人の関係がどうなるか結論づけずに観客にゆだねるわけです。こういう幅のある作り方、好きだなぁ。

そのキャスリーン・ノーランという名前に聞き覚えはありましたが、映画祭で上映されている場面なんかもちろん分かりません。なんと「ガン・スモーク」というテレビシリーズ1挿話に、バートとキャシー・ノーランが出ていたんだそうです。元妻に有名スターを持ってこないところも、奥ゆかしくていい。写真3が「ガン・スモーク」と今回のキャシー・ノーラン。「ガン・スモーク」の男はケン・カーティスです。

そしてエンドクレジットで、“in loving memory of Hannah Eimers”とあったので、“これは自殺したという娘の名前か?”と色めき立ちましたが、この映画の美術担当者でした。ハンナ・エマーズは、ノックスビルでロケしたこの映画にインターンとして美術部門に参加したのですが、11月に自動車事故で亡くなったそうです。この映画に参加した人々の中でもっとも熱心に仕事をしていたハンナは(とアダム・リフキンは語っています)、わずか17歳でした。それなら献辞にも納得です。
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