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2020年02月09日05:39

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自主映画に“完成度”を求めた僕が“失敗”だというなら、自主映画に未来はないと思う。第79回TOKYO月イチ映画祭に参加して。

このところ、昨年の11月から4か月連続で月イチ映画祭に参加しています。ふと考えたら、僕はこの映画祭でしか日本映画を見ていないのではないか?とさえ思う。もちろんこの映画祭で見られる映画が日本映画の代表作ではないし、それどころか今回のように長くても40分に満たない作品ばかり(米国アカデミー賞ならすべて短編扱いですね)ですから、“映画館で映画を見るのが正統”と主張する連中からは、僕は映画ではない映画を見ている、ということになります。

とはいえ、この映画祭が拾い上げてくれる諸作品の方が、大金をかけて宣伝している日本映画よりも、僕には見ていて“映画を見ている”という実感にあふれていることも事実。ところが先月は“大した作品”に出会えませんでした。その悪癖を今回のAプロまで引きずった気がします。

Aプロ最初が、岩崎友彦監督の「クライングフリーセックス」(15分)で、この映画祭の司会進行を務めている監督さんの作品です。もっと言えば、僕が劇場公開の時に見ているという、この映画祭ではあまり体験しない作品でした。僕の中では過去の作品なのでパス。この回で知り合った友人たちは、みんなこんな感情を体験しているんだなとも思いました。前月グランプリの作品を見直すという行為よりも、僕にはさらに意味がなかった。

続く作品が大川祥吾監督の「歌う!女探偵」(25分)。この監督さんは有料BSで「サムライオペラ」というミュージカルを見ています。嫌な予感がしたのですが的中でした。今回は日本語の歌ですが、歌さえ配置すればミュージカルだと思っている安易な姿勢がいただけない。僕の考えるミュージカルは、ドラマの高揚が歌となって爆発するというものなので、取ってつけたように歌が登場し、それ自体に魅力がない映画はミュージカルとして成立しません。

そして松尾豪監督の「グラフィティ・グラフィティ!」(30分32秒)でした。これは大学受験を前にした女子高校生が、グラフィティ・アートに挑むというもの。たまたま僕はバスキアのドキュメンタリーを見た直後だし、グラフィティ・アートというのならバンクシー程度の中身が欲しいと思っている人間なので、子供の落書きにNGを出す大人という発想についていけませんでした。さらにその大人が高校生を支援するという展開には、全く説得力がない。とはいえ、これが今月のグランプリに選ばれたのですから、それなりの印象を持った観客が多かったのでしょう。

しかし僕は知っています。「ウエスト・サイド物語」という映画のラストで、ソウル・バスが見せてくれたグラフィティ・アートを。そしてキース・へリングやバスキアがいて、バンクシーがいるわけです。「ウエスト・サイド物語」に興奮した僕が、「ラ・ラ・ランド」に失望するのは当然なのです。なにより「グラフィティ・グラフィティ!」は、テンポというものが悪い。デビッド・リンチじゃあるまいし、セリフ間の無意味な“間(ま)”をなんとかしてくれ、という作品でした。

Bプロでの挽回を期待しましたが、渋谷悠監督の「100年の謝罪」(22分28秒)も、何も無理やり100年も引っ張らなくていいでしょ、という感じでした。父親と息子の感情のズレさえ明確に描けたら、100年という時間など不要なんじゃないか。そもそも方法論が先行してドラマを作るなんて、退廃しかないと僕は思う。つまり、紙芝居で歴史を語る場面は受け入れられたけど、天気予報で歴史を語るのが“説明”でしかなかったのが致命的でした。

そして珍しく前月グランプリの山村もみ夫監督による短編2作連続上映となりました。「鶴を折る」と「豆を食う」2本で7分55秒です(写真3)。前者は「鉄ドン」、後者は「お豆映画祭」に応募した軽いコントのような内容です。実はこの2作が、僕には今月いちばん楽しかった。前月グランプリの「ストレスフルスイング」(やはり退屈)を見直した直後に、ピリっと小粒ながらいい薬味に出会えたということ。

でも、コント2発をまとめて作品とするのはいかがなものか、と逡巡していたら、最後に菱沼康介監督の「希望の旗」(39分、写真2)がありました。アイドルを辞めて俳優に転じた少女(吉崎綾)と売れない中年男優が、伝説のアイドルを追うという物語。トニ・コレットが伝説となった歌手(ジョニー・デップ特別出演)を追うという映画がありましたな(Lucky Them (2013)ね)。

それとは少し違うけど、吉崎綾が演じる元アイドルが“顔が少しいいだけで演技がダメ”という部分に説得力があり、踊りも別のタレントにかなわないという部分も画面で納得させます。そして伝説のアイドルの歌も、それなりに成立していたので、僕はこの作品をグランプリに推しました。しかし、次月のアタマにもう一回見るのは疲れるなぁと思っていたら、なんのことはない落選(苦笑)。

ということで僕にとって、今年に入っての月イチ映画祭は、山村もみ夫監督のコント2連発がいちばんなのでした。こんな程度にしか映画を見ない老人を喜ばせるのは、かくも簡単なことなのですよ。自主映画を作っている方々、短くてもいいから単純に面白い作品か、「正しいバスの見分けかた」みたいに空気感を明確にしてくれれば、僕はもろ手を挙げて賛成するからね。
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