mixiユーザー(id:6327611)

2020年02月08日06:01

285 view

カーク・ダグラスが103歳で亡くなりました。思えば僕の、最初のハリウッド・スターでした。

僕が最初に見たカーク・ダグラスの映画は、「星のない男」だったと思います。でも「海底二万哩」とどっちが先か、すでに記憶があやふやです。というのは、「星のない男」は奈良で見ていて、「海底二万哩」は大阪まで行ってロードショーで見たから。おそらく「星のない男」が最初でした。父親がカーク・ダグラスの早射ちについて語ってくれたことを覚えている。

それから65年も、カーク・ダグラスは僕の心の中で映画スターでありつづけました。ジョン・ウェインのように力でアメリカン・ウェイを誇示するのではなく、ヘンリー・フォンダのようにアメリカの良心を代表するスターでもありません。僕が自分で映画を見始めたころ、年の近いクリスチーネ・カウフマンを見るために「非情の町」を見に行ったら、なんと可憐なカウフマンを自殺に追いやる鬼のような弁護士でした。

あるいは「5月の7日間」という映画では、クーデターを首謀する主役をバート・ランカスターに譲っていて、宣伝のため来日したときには“監督からどの役でもいいと言われたから、女優と絡む場面がある方を選んだ”と言ってのけました。そういえば「OK牧場の決闘」でも、ワイアット・アープの役はバト・ランに譲り、病気もちのドク・ホリデイを演じていたのでした。

僕がカーク・ダグラスを追いかけたのは、「ユリシーズ」がポイントでした。以前から何度も言いましたが、ギリシャやローマを舞台にした史劇が大好きなもので、とくにトロイの木馬の話に魅せられていた僕は、カーク・ダグラスの「ユリシーズ」が見たくてたまりませんでした。そしたら木馬が出てくるシーンは1分もあったかどうか。でも知将ユリシーズの冒険を堪能したことは憶えています。←ラストの弓を射るシーンがCG化され、某映画会社のロゴマークに引用されている。

それから「バイキング」ですね。楽しそうに舟の櫂の上をぴょんぴょん飛び跳ねる姿は忘れられません。そして決定的だったのは「スパルタカス」でした。70ミリ映画が1年近くロングランされ、しかし70ミリだと割高だからと35ミリ版しか見ませんでしたが、あの奴隷の反乱という内容は、その後の僕の方向性に大きく関与しました。もちろんそのころは、ドルトン・トランボという名前を知りませんでしたが。

「スパルタカス」は同時に、あの切れ味抜群のタイトル画面にも魅了されました。ソウル・バスという名前を忘れられないものにした、とも言えます。ドルトン・トランボを描いた映画の中で、トランボが「スパルタカス」のタイトル場面に自分の名前を見いだし涙する場面がありました。

そう、カーク・ダグラスは自身のブライナ・プロダクションで映画を作っていました。だからハリウッドを追われて偽名で脚本を書いていたトランボの名前を、なんとか復権させたいと考えてクレジットしたわけです。オットー・プレミンジャーも似たようなことを考え「栄光への脱出」でクレジットしますが、アメリカでの公開は「スパルタカス」のほうがわずかに早い。

カーク・ダグラスの自伝によると、脚本のクレジットをどうしようという話になったとき、スタンリー・キューブリックが“私の名前にしてもいい”と言ったらしい。そんなことからカーク・ダグラスは、キューブリックを“才能あるろくでなし”と呼んでいます。そしてキューブリックは後年「スパルタカス」を“自分の作品ではない”と言い、カーク・ダグラスを“ミス・カーク・ダグラス”と呼んだらしい。

そんな後付けのトリビアは、僕にはどうでもいいわけです。DVDが発売されるようになってアメリカ盤を手に入れ、ようやく見ることができた「赤い砦」では、弾みをつけて馬に飛び乗る雄姿がすばらしいし、自伝にあったエルサ・マルチネリへの思いが手に取るようです。僕も「ハタリ!」のエルサ・マルチネリが大好きで、「予期せぬ出来事」のキャンキャンとイタリア語でわめく姿まで見に行ったほど。

見直してびっくりしたのは「ガン・ファイター」です。実は娘だという役のキャロル・リンレイとの関係には驚きました。中学生のころはそんなことまで気がつかない。それに気が付くと彼は昔から「地獄の英雄」なんて映画に出ているわけで、ひと捻りもふた捻りもした役どころが彼の妙味なのです。アカデミー賞に3度ノミネートされすべて落選、96年に名誉賞を受けたのでした。そのときは病気のため、演説もままならなかったのですが、その後ずいぶん回復していたように思います。

カーク・ダグラスはヨーロッパでの映画出演や映画祭によく参加していて、そのおかけで「カッコーの巣の上で」がハリウッドで映画化されました。ミロシュ・フォアマンがカーク・ダグラスに脚本を渡し、息子のマイケル・ダグラスが製作してアカデミー作品賞・監督賞・脚本賞・主演男・女優賞と、“主要5部門制覇”となった2本目の映画です。←1、3作が何かは映検好きな人にでも聞いてね。知らんかったらバカにしましょう(笑)。

日本で彼の最期の映画となった「グロムバーグ家の人々」もビデオで見ることができました。その前の「遺産相続は命がけ!?」も同じ。その結果、彼の作品は6割以上見ています。←オールシネマ・オンラインの全ジャンル検索におけるパーセンテージなので、かなり高い確率ですね。

なにしろ103歳まで御存命だったことに驚きます。もっとも5か月先に生まれたオリビア・デ・ハビランドがまだ健在。今年の7月1日には104歳となるようです。しかしながら、僕が小学生時代から見続けた映画スターで、ここまで長寿な俳優さんはカーク・ダグラスだけです。安らかに、というより大往生を称えたいという気持ちです。ご苦労様でした。
3 6

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年02月>
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829