宮沢賢治のゆかりの人々へのインタビューという一風変わった形式。とりあげられる10の人物も「元イーハトーヴ博物局技官レオーノ·キュースト氏」などと渋い(渋すぎる?)。鉄道、鉱物、発電所、電信、映画といった賢治が生きていたころの最先端の科学を賢治が存分に吸い込んで、自らの内で醸成し、詩や童話が形作られていった様を追体験できる。
理系の素養のある作家、例えば安部公房の乾いた文体や池澤夏樹の理知的な文体など独特の魅力があるが、宮沢賢治の理科系の知識と感性とが融和したようなみずみずしい文体は唯一無二のものだろう。
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