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2019年09月29日05:37

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19世紀のイギリスに生きたアン・リスターの“生きざま”は、実に興味深い。サリー・ウェインライト企画・製作総指揮・監督「ジェントルマン・ジャック 紳士と呼ばれたレディ」(2019)。

BBCとHBOの共同製作によるテレビドラマで、全8話ということで見始めました。そのうち4話を“キャッチアップ”ということで再放送してくれたもので、一気に見ればダメだと思ったところで止めればいい、と考えたわけです。そしたら第2シーズンがまだあるらしい。話が違うがな。

物語は1832年から始まります。西ヨークシャーのハリファックスという地域に、シブデン邸という旧家があり、その当主としてアン・リスター(サランヌ・ジョーンズ)が“男勝りに”活躍する、という展開。リスター嬢は女性ではあるけれど、自らの地所を守り発展させることを使命と感じていて、男性に対する興味は全くない。明確に女性を愛していますが、もちろん世の中のならわしから公言は避けています。

まず、永遠の伴侶であると信じていたヴィア・ホバート(ジョディ・メイ)が、世間体を優先して結婚します。そしてアン・ウォーカー(ソフィー・ランドル)という、若くして資産を手にした女性と愛し合う関係になる。前後して、シブデン邸の地所から石炭が採れるということで、産業革命時代の主役になれるかも、との展望が出てきます。

アン・リスターは400万語におよぶ膨大な日記を遺していたようで、サリー・ウェインライトは2016年に3万ポンドの脚本奨学金を得たことから、この物語について調べ上げることができたようです。画面にもその日記らしきものが登場しますが、筆跡が独特でとても英語とは思えませんでした。

僕としては、同性愛者に厳格だったイギリスの世相の中で、どういう生き方をしていたのかがポイントでした。しかし1話正味1時間あり、全部で8時間という構成です。そこには、世相に忠実な再現ドラマがありました。でも問題は、見ている僕が21世紀の価値観でしかない、ということです。

だからアン・ウォーカーが世間体を気にして、“同性愛の男性が縛り首に遭った”と悩むのに対し、アン・リスターは“それは男の話。女は縛り首にはならない”と信じている部分に、すこし違和感を覚えました。つまりアン・リスターは、男女同権を主張するけれども、男女差については“聖書に書かれている”と違いを信じている。

現在第5話まで見たわけで、アン・リスターが男性社会から“余計者”とみなされて“警告”を受けたところです。社会を変革するという方向ではないアン・リスターが、どのように生きたかという方向に興味が移ってきました。はたして第1シーズンだけで、どこまで話が進むことやら。楽しみでもあり、不安でもあります。これまで同性同士の愛の語らいシーンを、普通の恋愛ドラマのように美しく抒情的に描いて目を楽しませてくれました。だから、それはもう残りの挿話では要らんで(笑)。

ひるがえって現在、16歳のグレタ嬢が国連で演説したわけで、彼女がまっとうな発言をしているのに“子供だ”というマスゴミの受け止め方はひどいと思う。5歳の子供でも、ボーっと生きてんじゃねぇよ!と叫べる時代なのに。つまり僕は、正しいことを貫かず(と僕に見えるだけ。リスターとしては貫いている)に正しく生きることが可能かどうか、このドラマを見続けたいと思っています。

写真3は唯一僕が知っている俳優さんのジョディ・メイ。「ワールド・アパート」(1988)のけなげな娘さんも、40代半ばになりました。
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