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2019年09月28日09:59

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俳優の櫻井拓也さんが亡くなりました。親しく言葉を交わしたこともない僕ですが、その気持ちだけは記録しておきたいと思います。

桜井さんの名前を明確に意識したのは、毎年行われてきたピンク映画の決算イベントで主演男優賞を受賞したときでした。そのとき、ピンク映画より前に「恋のプロトタイプ」というオリジナルビデオで見ていたことを知りました。

「恋のプロトタイプ」を見たのは、2015年4月25日(土)のことでした。神戸の映画資料館で池島ゆたか監督の「おやじ男優Z」を、神戸映画資料館で上映するということで、どうせ行くならその前に上映する中村公彦監督の「恋のプロトタイプ」も見ようと、13時半からの上映に間に合うよう出かけました。

その「恋のプロトタイプ」が、僕には“こういう映画が見られるのなら、東京から神戸までの交通費なんか惜しくない”という作品だったのです。そのときの日記を引用します。

>物語は“お約束”ともいえる展開を見せますが、設定や展開がお約束だから映画がつまらないのではなく、つまらない描き方だからお約束がお約束でしかなく、その結果つまらない映画になっているのです。この「恋のプロトタイプ」のアクチュアリティは、僕にとって日本映画の未来に一筋の光をもたらすものでした。
 最高だったのは、こずえ(星咲優菜)がレジにいる心平(櫻井拓也)のところに走ってきてキスをするシーン。これは本当に、キャメロン・クロウの「セイ・エニシング」におけるキス・シーンに匹敵する名シーンだと思う。こういう“ときめき”を感じさせる映画に、まさか昨日、それも神戸で出会えるとは!←僕の勉強不足を恥じています。しかし、その勉強不足を非難できるのは、この「恋のプロトタイプ」を作った人たちだけですからね。

この心平を演じた櫻井さんはその後、主演男優賞を受賞するなどピンク映画界で活躍します。あまりピンク映画を見ない僕も、CSでの放送などで少しは活躍ぶりを知っていました。その若手バリバリ俳優としての将来を約束された櫻井さんが突然亡くなるとは、なんとも残酷な運命です。
 先日、久しぶりに見た後藤大輔監督作「死にたくなるよと夜泣くタニシ」(2019)でも、主演の和田光沙さんの弟役として独特の存在感を見せていてくれたばかりなのに。そのときの感想も引用しておきます。

>一心不乱に妄想しながら自宅を通り過ぎる主人公・谷静香(和田光沙)と、それをバイクで見送る弟(櫻井拓也)の雰囲気など、最近接していない感覚だったのでうれしかった。

31歳になったばかりという若さは、時として自身の体の具合よりも別のものを優先させてしまうような気がします。僕自身、二十代半ばでレコード会社の宣伝マンになったとき、京阪神を飛び歩いて深夜までのプロモーションが楽しく、KBS京都で体調を崩したことがありました。KBSの高田正人さんたちが病院に担ぎ込んでくださって、翌朝何もなかったかのように回復しましたが、もしかしたら櫻井さんもそんなかたちではなかったのかと想像します。

僕は現在72歳を超えて、体が以前より動きにくくなったことはもちろんですが、それゆえに体調には気をつけています。しかし若いころは、体調なんか元気であたりまえ、という気分でした。その若さの特権を謳歌するのは結構ですが、本人が気づかない落とし穴があることを、みなさんは肝に銘じてください。

ここに櫻井拓也さんのご冥福をお祈りすると同時に、今生きている我々すべての人間にとって、“生き続けること”が最優先課題だということを思い出しましょう。桜井さんが平均寿命から50年近くも早く旅立ったことは残念でなりませんが、彼が我々に“平均余命を分け与えてくれた”とも言えます。僕はその気持ちを忘れないように、残る人生をすごしたいと思います。
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