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2019年09月20日09:01

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〇〇力とはなにか?

近年、「女子力」という奇妙な言葉をよく聞く。意味するところがよく分からないのだ。定義が曖昧でも言葉が流通すると、それなりに言葉の相貌が立ち上がり人それぞれの解釈で通用することになる。この種の「力」の使用法はじまりは、おそらく明治大学野球部の元監督であった島岡吉郎氏の「人間力」にあるのではないかと思う。 女子力は「女性的魅力」、人間力は「根性」と言ってしまっても良いような気がするが、もっと広範な潜在力というようなものを表現しようという意欲が感じられる。 

 そのような曖昧な「力」の使用法が許されるのは、力というものがもともと目に見えないからだろう。意外と思われるかもしれないが、目に見える力というものは存在しないのである。眼に見えるものは現象とか効果と呼ばれている。私たちは、現象があればその背後に力が働いている、と不可避的に考えてしまうのである。その習性こそ人間が科学を発展させてきた原動力であるとも言える。

 りんごを空中で手放すと地面に落ちてしまう。昔の人は物は地面の方に行きたがっていると考えた。物は地面の方へ行こうとする力を持っていたと考えていたのである。そして、ニュートンは万有引力というものを考えて、より広範な現象を説明することに成功した。いずれも、物が落ちる背景には力が働いているという点においては同じである。現象の背後に働いている力の性質を突き止めるのが科学であると言っても良いかと思う。

 近年、科学と哲学の間には境界というものがないと主張する風潮もあるらしいが、力というものを通してみると、科学と哲学にはやはり違いがあると言わざるを得ないような気がする。力は科学的には実在であるが、哲学的には推論による構成物でしかない。科学者は「万有引力があるからリンゴが落ちる。」と言うが、哲学者は「リンゴが落ちるから、科学者が『万有引力がある。』と言うのだ。」と言うのである。

 では、禅者ならばどう言うだろうか? たぶん何も言わない。リンゴが落ちる、ただその事実を受け入れるだけである。
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