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2019年09月14日05:53

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盲点は見えない

 理科の時間に盲点を見るという実験をやった経験は誰にもあると思う。片目をつむって、目の前に差し出した自分の人差し指を見る。その視点を固定したまま指を外側へ移動させると、自分の指先が見えなくなる一点がある。これはとても不思議な感覚で、私はこの実験で軽いショックを受けたことを覚えている。確かに盲点の部分は見えないのだが、それは「●」のようになっているわけではなく、どう見えないのかが判然としないのである。ショックを受けたというのは、それまで自分の視野というものが完備的であると思っていたからである。盲点の実験により、私は「盲点そのものが見えない」ということを知ったのである。

 一昔前に「ゴーストバスターズ」という映画が流行ったことがある。悪いゴースト(幽霊)を退治するというコメディである。それを見ている自分の中の心の動きに興味深いものがあることを見つけた。ストーリーの中で、ゴーストの存在を信じない警官や政治家がゴーストバスター達の邪魔するのだが、その行為がとても保守的で頑迷な印象をともなっているのである。その頑迷さが非常に愚かで滑稽さを帯びている。しかし、現実に引き返して考えてみるなら、保守的で頑迷と見えた彼らは普段の自分そのものなのである。彼らは少しも愚かではないし滑稽でもない、まともな判断をしているだけである。逆に、「聖なる戦い」に挑んでいるゴーストバスター達こそ、「とんでも」科学にとりつかれた迷惑野郎ということになる。

 しかし、映画を観ている時点では、ゴーストバスターたちの方に感情移入してしまい、彼らのやっていることに対して「聖」性を感じてしまう。どうやら人間には、非常識なことに血道を上げる性質というものが、こころの中のどこかに備わっているらしい。いつの時代にも、ごく少数ではあっても普通の人から見れば馬鹿げたことに情熱を燃やす人々がいて、そのことが人類の画一化を防いでいるのではないかというような気もしてくるのである。

 常識的な世界は一見完備的に見えても、どこかに盲点があるかもしれないと考えれば、そのようなことにも合点がいくのではないだろうか。
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